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玉三郎が語る、歌舞伎座『日本振袖始』

玉三郎が語る、歌舞伎座『日本振袖始』

 

 

 12月1日(火)から始まる歌舞伎座「十二月大歌舞伎」第四部『日本振袖始』に出演する坂東玉三郎が、公演に向けての思いを語りました。

玉三郎が語る、歌舞伎座『日本振袖始』

  

舞台で現実を忘れて

 9月10月の第四部では、「映像×舞踊 特別公演」として、2カ月間一人で歌舞伎座の舞台を勤めた玉三郎。「コロナへの対策として、人と会わずにお客様に異空間を楽しんでいただくということで考えてやったんです」と、上演の経緯を語ります。接触を最低限にするため、楽屋入りの時間も決められているなかでの公演。スタッフとの打ち合わせの時間がとれず苦労したものの、電話で事前に打ち合わせを重ねることで対応し、「(公演が決まり、)動き出してからは、あっという間に過ぎた気がします」と振り返りました。

 

 『口上』では、映像を用いて舞台裏の様子を紹介し話題となりましたが、「幕間が取れない公演だったので、支度の間もお客様に楽しんでいただくためにそうしました。きちんとお見せできるように、皆と相談して、場所を何度もロケハンして」と、お客様を楽しませるためのこだわりが根底にあったことを明かします。「(劇場に)入ったら、現実を忘れてもらいたいと思う」と何度も口にする様子からは、こうした状況下で舞台に立つうえでの信念がうかがえます。

 

12月は歌舞伎らしい作品を

 2カ月間の出演を経て、感染防止対策を講じての公演にもなじみ、「だいぶ落ち着いてできるようになった」と語る玉三郎。また、12月は「なんとか歌舞伎らしいものを」との思いから、『日本振袖始』岩長姫実は八岐大蛇を6年ぶりに勤めます。

 

 『日本振袖始』は日本神話を題材とした舞踊劇。玉三郎は「音楽が非常によくできている」とその魅力を分析します。また、「作品の主眼は、やはり神話を歌舞伎にしたらどうなるか、という世界。そして、醜く生まれた岩長姫が、綺麗な女性を人身御供にしていく、女の姫が女の姫を食べるという実に退廃的な作風が、面白さとしてあると思います。後シテものでも、軍兵や捕手がかかるのではなく、八岐大蛇の分身がかかっていくなど、独特ですね」と、この作品ならではのみどころを説明しました。

 

 共演の尾上菊之助、中村梅枝との稽古については、「今回はなるべく前の形を踏襲して、個別でお稽古しながら舞台でドッキングさせる、という形にします。でも二人とも勉強家なので大丈夫。とても一所懸命だから、ちゃんと勉強されると思いますよ」と、笑顔。演出についても、「今の時期、お客様に不安を与えることが一番良くない」と配慮をみせながらも、「できる限り良いものをつくってお届けしたいという思いです」と、決意をにじませました。

 

いただいたものを、誠実に

 コロナ禍が続くなか、今後について「いただいたものを、誠実にやるだけです。本当にそれしかない」と語る玉三郎。「演劇活動が自由にできないことに対しては、個々が考えるべきだと思うんです。いずれは終息していくのだから、その間になにをするか、自分たちが考えないと。コロナのせいにしてはいけないと思います」と続けます。

 

 若手俳優への芸の継承についても、「(歌舞伎俳優は)何十年の世界です。資料もたくさんある時代ですから、会えないならば会えないなりの自習を」と、常に冷静に歌舞伎の未来を見据えている様子。舞台上でも常に心に秘めていたという、劇場に足を運んでくださるお客様への深い感謝も口にしました。

 歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は、12月1日(火)から26日(土)までの公演。チケットは、11月13日(金)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2020/11/11