ニュース

尾上右近「研の會」Christmas Partyのお知らせ

　12月24日（木）・25日（金）に東京セルリアンタワー能楽堂で、尾上右近自主公演「研の會」Christmas Partyが開催されます。

▼

　「メリークリスマス！」の発声とともにサンタクロースの装いで制作発表の会場へ登場した右近。今年は開催を見送っていた「研の會」ですが、「クリスマスに今年一年の自分をお届けしたい、プレゼントしたいという思い」で、緊急企画として「研の會」Christmas Partyが開催されることとなりました。

3つの型を踊り分ける『藤娘』

　『藤娘』は、右近の曾祖父にあたる六世尾上菊五郎が創作し、現在もよく上演される「藤音頭」、日本舞踊のお稽古でもポピュラーな「潮来出島（いたこでじま）」、さらに六世中村歌右衛門が手を加えた「潮来出島」（杵屋栄二補曲）の3つの型を、各回で踊り分けます。「コロナ騒動の前に、この3つの型を踊るのも面白いのではないかと考えていました。自分の経験のためにはもちろん、お客様になにかプレゼントを、と考えて」、毎回違う型で踊るという、今回の挑戦を決めたと言います。

　3つの型の踊り分けについて、「藤間勘祖先生には、あなた自信あるのね。と言われました（笑）。でも、3つの振付があるということを（お客様に）知っていただくきっかけにもなるのでありがたい、と言っていただいてうれしかった」と話す右近。「藤音頭」については、「音羽屋にとっても所縁の深いもので、踊らせていただきたいと思っていましたし、大事なものという感覚はもちろんあります。ただ、だからといってそれにこだわらなくてもいい。全部やってみたいという、子ども心です」と笑顔を見せます。「衣裳は毎回変えて、全公演観ていただいても楽しんでいただけるよう、バリエーションをお見せしたいと思います」と、力強くアピールしました。

「研の會」で初めての新作

　「研の會」で初の新作上演となる『隠～ONU～』。「いつか新作を上演してみたいという思いがありました。今回、緊急企画ということもあり、この勢いに身を任せて短期間のなかでつくり上げ、皆様にお届けしたい」と意欲を見せます。「大人気劇作家の藤沢文翁さんに、原作・アドバイザーをお願いさせていただきました。誰もがもつ妬み、嫉み、恨み、そういった蓋をしている感情に触れ、そこをくすぐるような作品で、どのように演出して立体化していくか、劇化していくか私自身もワクワクしているところです」。

　「『大江山酒呑童子』を題材に、酒呑童子がなぜ鬼になったのかという切ないエピソードを膨らませて作品化していくことになりました。鬼になりきれない、その宙ぶらりんな状況こそ、人の心の揺れ動きや苦しいところ。そこを切ない作品として作り上げていきたいです」。タイトルにもなっている『隠』は、「昔は鬼のことを“隠（おぬ）”と呼んだことから、テーマは『隠』にしましょう」と、藤沢氏との会話のなかでテンポよく決まったと話します。

　また、今作では音楽にチェロを使います。「制約のなかで出来得る限りの表現の可能性を試すことが今回のテーマでもあります。能楽堂という空間にもそぐうような音で、表現の幅があり和の楽器ではないものを文翁さんとご相談しました。チェロは、穏やかな音も激しい音も出る。歌舞伎でいうと義太夫的な、低音も非常にメロディアスなものも演奏可能で、幅があるので」決まったとのこと。「衣裳は考案中です。抽象的な、俯瞰で物語っているような扮装というのを考えたい」と、さまざまなアイデアが浮かんでいる様子がうかがえます。

◇

　「歌舞伎のために恩を返していきたい。歌舞伎があるからこそ一所懸命やろうという気持ちになれる」と熱い思いを語った右近。「演劇界も、安全対策をしながら一歩ずつ再開の方向へ向かっている状況です。やはり現実を忘れるためにあるのが演劇だと思うので、対策を整えたうえで、どこかで皆さんが抱いていらっしゃる不安を吹き飛ばすような公演にして、素敵なクリスマスを過ごしていただけたらと思います」と、締めくくりました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━

尾上右近自主公演

「研の會」Christmas Party

━━━━━━━━━━━━━━━━━

_{二世藤間勘祖振付}

一、藤娘（ふじむすめ）

藤音頭にて相勤め申し候
潮来出島にて相勤め申し候
潮来出島（杵屋栄二補曲）にて相勤め申し候

_{藤沢文翁原作・アドバイザー
藤間勘十郎演出・振付}

二、隠～ONU～（おぬ）

■日時

12月24日（木）夜の部17：30開演

12月25日（金）昼の部12：00開演／夜の部17：00開演