ニュース

壱太郎、尾上右近、隼人が語る、南座「三月花形歌舞伎」

 

 2024年3月2日(土)から始まる南座「三月花形歌舞伎」に出演の中村壱太郎、尾上右近、中村隼人が、公演について語りました。

近松門左衛門歿後三百年に寄せて

 「今年は近松門左衛門歿後三百年という記念の年。やはり近松の作品が良いのではということで、『河庄』と『女殺油地獄』を上演します」と、口火を切る壱太郎。「近松門左衛門の辞世の句、『それぞ辞世 去ほどに扨(さて)もそのゝちに 残る桜が花しにほはゞ』がありますが、近松の松と“残る桜”の桜を取って、松プロ、桜プロの2種類のプログラムを上演します。それぞれの演目をひと言で表すと、『河庄』は“愛”、『女殺油地獄』は“情(じょう)”、『将門』は“艶(あで)”をテーマとして掲げています」と、工夫を凝らした演目に触れます。

 

 

 続いて『河庄』で紙屋治兵衛を勤める右近が「上方の香りのするお芝居がとても好きで、自分も演じたいという気持ちがありました。なかでも『河庄』は、近松作品のなかでも非常に大人な作品で、集大成のような作品だと思っています」と、語ります。「鴈治郎家に伝わる作品に身を投じ、継承して、伝承させていただくつもりで取り組みます。30代に入り、内面的なものを伝えること、熱演や力演だけではない作品への理解、脚本への愛情を大切にしたい。また、同世代の3人で芝居を作っていくなかで、現代に生きる意味、受け継ぐ意味という二つの大事なポイントを、自分のなかで温めて勤めたいです」と、気合いを込めて語ります。

 

 『女殺油地獄』で、河内屋与兵衛を勤めるのは隼人。「この作品は、人形浄瑠璃での初演から上演が途絶えたものを、二世(實川)延若さんが手を施し歌舞伎として初演され、その後(片岡)仁左衛門のおじ様が与兵衛を勤めて、広く知られるようになったと聞きます。ここ3、4年ほど、仁左衛門のおじ様にいろいろなお役を教えていただくなかで、与兵衛はずっと勤めたいと思っていたので、初めて演じられることを本当にありがたく思います。まずは、「殺し」の場面での、複雑な生い立ちをもつ与兵衛の狂気。だんだん楽しくなったり、我に返って大変なことをしたと気づいたり、その気持ちの変化をお見せできたら。そしてやはり歌舞伎として、様式美を表現することを意識して勤めたいです」と、意欲を見せました。

 

 

新しい世代の近松作品

 近松の作品を演じるにあたり、「型ではない部分もとても大切で、まず役の気持ちになり、それを表現することの重要性を一番感じたのが、以前勤めた『封印切』の忠兵衛でした」と、右近は振り返ります。「『女殺油地獄』は殺人、『河庄』は心中と、テーマ自体はシビアですが、要所要所にふっと力が抜けるところがある。ある種のおかしみがありながら、でもだんだん笑えなくなっていったりと、いろいろな感情の綯交ぜがある世界が、近松作品の特徴だと感じます」と、思いを口にします。

 

 それを受け、『河庄』で小春を、『女殺油地獄』でお吉を勤める壱太郎は、「近松作品は特に、どこまでも深めていける役が多いと感じています。祖父の(四世坂田)藤十郎、(二世片岡)秀太郎のおじ様にお吉と小春を習うなかで、両方とも女方としての色気や感情の機微が必要だと学びました。その空気は一人ではなく、相手役と出すもの。今回右近くんと隼人くんと演じることで、新たな上方の女性像が生まれ、僕らの世代の“近松”になると思う。先輩方が培ってこられたなかから、僕らが何を得て、何を表現するのかが大きく試されると思います」と、力強く述べます。

 

 「近松の作品に出演する機会がこれまで少なかったので勉強をしていますが、頭でっかちになるばかりではなく、監修の仁左衛門のおじ様、共演のお二人をはじめ、経験した方々に聞くことを、今回は大事にしたいと思います」と、隼人が続けます。「近松作品はその時に起きた事件などをリアルに描いた作品。今だったらなかなか難しいことかと思いますが、この時代まで上演が繰り返されるということは、人々の共感を呼べる作品づくりがされているのだと思う」と、その魅力に触れました。

 

 

芝居小屋のような空気のなかで

 『将門』について壱太郎は「濃いドラマの後なので、派手な作品をお見せできれば。かつて(二世市川)猿翁のおじ様は、歌舞伎の要素として3S掲げていらっしゃいましたが、この作品はストーリー、スピード感があり、そしてスペクタクルな結末なので、見ていただきたいと考えました」と、明かします。「江戸時代の芝居小屋の香りがする演目。南座は、芝居小屋のような距離感や雰囲気もあり、この『将門』という演目と劇場の相性が非常にいい気がします」と、続ける右近。隼人が、「常磐津の名作。南座に合っていると思います。以前舞踊会で光圀を勤めましたが、今回は振りも違いますし、ぶつかっていきたいと思います」と、決意を述べました。

 

 今回で4年目となる「三月花形歌舞伎」。「芝居はもちろん、番附、グッズ、撮影スポットなど今年もお客様に喜んでいただけるよう、出演者、劇場と一丸となって盛り上げていきたいと思っていますので、ぜひ楽しんでいただきたいです」と、壱太郎が呼びかけます。「責任をもって真剣に芝居に取り組むと同時に、親しみやすさも感じていただけるように。近松の辞世の句の話が出ましたが、近松の言う“残る桜”、その桜の花の香りを漂わせるのは僕たちですので、きちんと伝えていきたい」と、右近も気持ちを込めます。「歌舞伎は伝統芸能であり、伝承芸能だと思いますので、芸に挑戦しながら、継承しているのだと感じていただけるような作品のクオリティにしていきたいです」と、隼人が力強く締めくくりました。

  南座「三月花形歌舞伎」は、3月2日(土)から24日(日)までの公演。チケットは2月9日(金)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2024/01/23