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歌舞伎座「三月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「三月大歌舞伎」初日開幕

 

 3月4日(木)、歌舞伎座「三月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 今月も新型コロナウイルス感染拡大防止対策を徹底してお客様をお迎えしている歌舞伎座。2月に引き続き、三部制(各部総入れ替え、幕間あり)での上演です。

 

 第一部は、江戸歌舞伎のはじまりを創作を交えて描く舞踊劇、『猿若江戸の初櫓』で幕を開けます。勘九郎と七之助の二人が、猿若と出雲の阿国を勤め、芝居小屋を開く希望を胸に江戸へ向かいます。旅の道すがら、猿若の機転を利かせた働きを見た、扇雀勤める奉行板倉勝重の計らいによって、江戸中橋に芝居小屋設立を許されます。嬉しさのあまり猿若と出雲の阿国は、京の御所で披露した舞を踊ってみせ、歌舞伎の繁栄を願いつつ舞い納めると、客席から大きな拍手が起こりました。

  

 二幕目は、華やかな舞踊劇『戻駕色相肩』。島原の廓から駕籠を担いできた松緑演じる浪花の次郎作と、愛之助演じる吾妻の与四郎は、春景色のなか、ひと休みをしたところで、駕籠の中から莟玉演じる禿のたよりを呼び出します。桜を背景に、赤っ面風の次郎作と白塗りの与四郎、そして振袖姿の禿が加わり、錦絵さながらの舞台は見ごたえたっぷり。実は次郎作と与四郎が、敵同士であることがわかると、華麗な舞台が一転、緊張した雰囲気に。春らしく、明るい雰囲気に包まれた舞台が続き、第一部の幕が閉じました。

 

 第二部は、昨年末、南座「吉例顔見世興行」でも上演された、仁左衛門の熊谷次郎直実による『熊谷陣屋』で始まります。静粛な雰囲気のなか、花道から仁左衛門が現れると、場内は大きな拍手で包まれました。義太夫にのって、直実が合戦の様子を語る場面は気迫に溢れ、「制札の見得」では、我が子を犠牲にした深い苦しみを伏せながらも、主君を前に平静を装う武将としての強い思いが込められました。最後は、客席に響いた「十六年は一昔…」のせりふが、観る者の涙を誘い、幕切れとなりました。

 

 続いて、河竹黙阿弥による世話物の名作『雪暮夜入谷畦道』「直侍」。雪の積もる夜、人目を忍んで蕎麦屋に入ってきたのは菊五郎演じる片岡直次郎。舞台で本物の蕎麦を食べる名場面では、菊五郎の粋な江戸っ子姿が際立ちます。時蔵演じる恋仲の傾城三千歳が療養中であると知った直次郎は、東蔵演じる按摩丈賀に手紙を託します。清元の余所事浄瑠璃が、二人の逢瀬を艶やかに演出するも束の間。悪事が露見し追われる身となった直次郎は、三千歳に別れを切り出します。美しい情景と、思いもかけない展開に客席が引き込まれるひと幕となりました。

 

 第三部は、色彩美と様式美を兼ね備えた時代物、『楼門五三桐』で幕を開けます。吉右衛門の石川五右衛門が、春爛漫の南禅寺の楼門から、「絶景かな、絶景かな」と、都の風景を眺める場面はあまりに有名です。自らを詮議する真柴久吉への恨みを語り大悪党の貫禄を見せつける五右衛門。そこへ、せりが上がって、幸四郎の真柴久吉が颯爽と現れました。五右衛門が投げ打つ手裏剣を、久吉が受け止め、二人が門の上下から「天地の見得」で決まると、大きな拍手が沸き起こりました。

 

 Aプログラムとなる初日最後のひと幕は、能の演目を素材とした『隅田川』です。玉三郎演じる斑女の前は、我が子、梅若丸の行方を尋ね、都から東国までやって来ます。隅田川の川辺で出会った鴈治郎演じる舟長から、偶然にも、不幸のなか亡くなった我が子の最期の様子を聞かされます。梅若丸の塚の前で、狂おしいほどの哀しみを見せる斑女の前の姿から、子を思う母親の普遍的な愛情が伝わり、客席を深く魅了しました。幽玄の世界感に包まれながら、「三月大歌舞伎」の初日の幕が閉じました。

歌舞伎座「三月大歌舞伎」初日開幕

 歌舞伎座「三月大歌舞伎」は29日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/03/08