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歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 

 2025年6月2日(月)、歌舞伎座「六月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

【大きなサイズの舞台写真は、ページ下部でご覧いただけます】

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 『元禄花見踊』左より、中村隼人、尾上右近

 尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎襲名披露 尾上丑之助改め六代目尾上菊之助襲名披露興行の2カ月目の幕開きを飾るのは、『元禄花見踊』。暗転した場内が柝の音と同時にパッと明かりがつき、満開の桜のなかに出雲の阿国(尾上右近)たち一行が現れると、華やいだ舞台に客席からため息がもれます。名古屋山三(隼人)も加わり、賑やかな鳴物が響くなか、出雲の阿国と名古屋山三を中心に艶やかな舞を次々と披露。花形俳優が顔をそろえ襲名を寿ぐ舞台に、客席は晴れやかな雰囲気に包まれました。

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 『菅原伝授手習鑑』「車引」尾上菊之助

 続いては、尾上丑之助改め六代目尾上菊之助襲名披露狂言『菅原伝授手習鑑』「車引」。梅王丸(菊之助)と桜丸(吉太朗)の兄弟が行き会い、互いの身の上を嘆く場面から始まります。梅王丸が笠を取り、隈を取った新菊之助の顔が現れると、場内からは割れんばかりの拍手が巻き起こりました。そして梅王丸が豪快な飛び六方で花道を引っ込み、桜丸もそのあとを追います。所は変わり吉田神社の社殿では、杉王丸(種太郎)が二人を押し止め、そこに松王丸(鷹之資)が現れます。3兄弟が争うなか、牛車の中から藤原時平(又五郎)が現れ恐るべき力を示すと…。歌舞伎の代表的な名場面を、11歳の新菊之助が身体いっぱいで勤める姿に、「音羽屋!」の声と大きな喝采が場内に沸き起こりました。

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」左より、八代目尾上菊五郎、片岡愛之助

 そして、尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎襲名披露狂言の『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」。寺子屋を営む武部源蔵(愛之助)と戸浪(雀右衛門)夫婦は、恩義ある菅丞相の実子・菅秀才をわが子と偽り匿っています。ここへ、千代(時蔵)が息子の小太郎を寺入りさせるために連れてきます。時平方より菅秀才の首を討つよう命じられ寺子屋へ戻ってきた源蔵は、苦悶の末にその小太郎を身替わりにします。小太郎の悲劇的な運命と、源蔵夫婦の苦悩に客席の緊張感が高まります。そして検分役として松王丸(八代目菊五郎)が春藤玄蕃(萬太郎)を連れて現れると、差し出された小太郎の首を複雑な表情を浮かべながら「菅秀才の首に相違ない」と認めますが、実は…。親心と忠義との狭間に苦悩する、松王丸の複雑な心情の変化を演じた八代目菊五郎に大きな拍手が送られました。

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 『お祭り』前列:片岡仁左衛門/後列左より、中村種之助、片岡孝太郎

 最後に『お祭り』で、昼の部は打ち出しです。鳶頭(仁左衛門)が江戸っ子の心意気を明るく踊り描き、婀娜(あだ)な芸者(孝太郎)との粋なやり取りが繰り広げられます。そこへ鳶の者(彦三郎、坂東亀蔵、隼人、歌之助)と手古舞(壱太郎、種之助、米吉、児太郎)が加わり華やぎが増します。また、尾上右近が清元栄寿太夫として清元の浄瑠璃方に居並び美声を聞かせ、最後は仁左衛門の鳶頭が大勢の若い者との派手な所作立てを見せて、場内は大盛り上がりのうちに幕となりました。

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 『暫』前列左より、中村梅玉、市川團十郎/後列左より、中村種之助、中村歌昇、市川男女蔵、市川右團次、中村芝翫

 夜の部は、歌舞伎十八番の一つ『暫』で幕開きです。鶴ケ岡八幡宮の社頭で傲然と構える清原武衡(芝翫)、これに従うなまず坊主の鹿島入道震斎(鴈治郎)、那須九郎妹照葉(雀右衛門)ら、歌舞伎の様式美にあふれる役柄が舞台上にずらりと並びます。武衡の意に従わぬ加茂次郎(梅玉)、桂の前(魁春)たちの首が、成田五郎(右團次)らによってはねられようとするまさにそのとき、「暫く」と響く声とともに、勇ましい姿の鎌倉権五郎(團十郎)が颯爽と花道より登場。客席からは「成田屋!」の大向うとともに大きな拍手が響きました。花道七三では、大きなみどころの一つであるツラネを、音羽屋の襲名披露に重ねて雄弁に披露し場内を沸かせます。権五郎が悪人たちを痛快に成敗し、荒事の魅力が横溢する祝祭劇で、夜の部の幕を華やかに開けました。

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 『口上』左より、中村梅玉、市川團十郎、尾上菊之助、八代目尾上菊五郎、七代目尾上菊五郎、尾上松緑、片岡仁左衛門

 続いては、『口上』。音羽屋ゆかりの京都の名所や、音羽屋の役者文様が描かれた舞台装置を背景に、七代目菊五郎の発声で始まり、松緑、仁左衛門、梅玉、團十郎の順に、襲名する親子へのお祝いの口上が述べられます。八代目菊五郎は、「歴代の菊五郎が大切にしてまいりました、伝統と革新の精神に則りまして、精進してまいる覚悟」と決意を固めます。菊之助は「大きな名跡を襲名させていただく感謝とともに、立派な歌舞伎俳優になれますよう、なおいっそう精進いたしますれば、いずれも様、この後もご後援のほどを偏にお願い申し上げ奉りまする」と力強く挨拶しました。七代目菊五郎の茶目っ気のある口上には、客席から笑い声が響く場面も。「八代目!」「音羽屋!」の大向うが響き、万雷の拍手で幕を閉じました。

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 『連獅子』左より、尾上菊之助、八代目尾上菊五郎

 3幕目は襲名披露狂言『連獅子』。幕が開くと、狂言師右近(八代目菊五郎)と左近(菊之助)が、親獅子が仔獅子を谷底へ蹴落とし、這い上がってきた子を育てるという故事を踊って見せます。八代目菊五郎と菊之助親子の師弟関係に、親獅子と仔獅子の故事が重なり、親獅子が仔獅子を思う親心や厳しさを繊細に表現。親子の息がぴったりと揃った踊りに、客席は一気に引き込まれます。浄土の僧遍念(愛之助)と法華の僧蓮念(獅童)によるコミカルな宗論の間狂言を経て、親獅子の精(八代目菊五郎)と仔獅子の精(菊之助)が花道から堂々と登場。獅子の精の獰猛な狂い、勇壮で華麗な毛振りで客席の盛り上がりは最高潮に。親獅子と、ひたむきに食らいつくかのような仔獅子の二人の踊りに、客席からは大きな拍手がやみませんでした。

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 『芝浜革財布』尾上松緑

 夜の部は、『芝浜革財布』で明るく打ち出しです。大酒呑みで怠け者、魚屋の政五郎(松緑)は、ある朝、大金の入った革財布を浜で拾います。祝いの代わりにと政五郎が大工勘太郎(坂東亀蔵)、左官梅吉(彦三郎)、錺屋金太(松江)、桶屋吉五郎(吉之丞)の仲間たちを呼んだどんちゃん騒ぎに舞台も客席も大盛り上がり。女房おたつ(萬壽)は呆れて、革財布を手にして一計を案じます。酔いつぶれた政五郎が目を覚ますと、おたつから夢を見ていたのだと言われて…。江戸っ子気質の政五郎と、しっかり者のおたつの夫婦の情愛に心温まる名作に、観客は笑って泣いて夜の部の幕となりました。

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

ティファニーブルーのグラデーションを背景に、白菊の花が富士の嶺のように描かれた「祝幕」

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 

 歌舞伎座地下2階の木挽町広場(かおみせ)では、6月期間限定で老舗店の銘菓を特別販売いたします。観劇の際はぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「六月大歌舞伎」は27日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

 

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

『元禄花見踊』左より、中村隼人、尾上右近

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

『菅原伝授手習鑑』「車引」尾上菊之助

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」左より、八代目尾上菊五郎、片岡愛之助

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

『お祭り』前列:片岡仁左衛門/後列左より、中村種之助、片岡孝太郎

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

『暫』前列左より、中村梅玉、市川團十郎/後列左より、中村種之助、中村歌昇、市川男女蔵、市川右團次、中村芝翫

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

『口上』左より、中村梅玉、市川團十郎、尾上菊之助、八代目尾上菊五郎、七代目尾上菊五郎、尾上松緑、片岡仁左衛門

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

『連獅子』左より、尾上菊之助、八代目尾上菊五郎

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

『芝浜革財布』尾上松緑

2025/06/10