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幸四郎が語る、歌舞伎座『近江源氏先陣館』「盛綱陣屋」

 9月7日(火)から始まった、歌舞伎座「九月大歌舞伎」第二部『近江源氏先陣館』「盛綱陣屋」に出演の松本幸四郎が、公演にかける思いを語りました。

演じ続けたい役

 当初の初日から5日遅れて開幕した「九月大歌舞伎」第二部。幸四郎は、「歌舞伎をやる意味があると信じて、舞台ができるときに向かってひたすら待つ思いでおりました。立ち止まるのではなく、今の時期にできることを考えております。一日一日、気持ちを強くもって勤めたいと思います」と、切り出します。

 

 今月、初役で盛綱を勤める幸四郎。「私にとっても、私の家にとっても大事なお芝居。盛綱という役は、目標とする役の一つだったので、それを初役で、歌舞伎座で勤めさせていただくことへ、喜び以上のプレッシャーがあります」と、胸の内を明かします。「自分がこの役を演じ続けるという宣言の意味で、選んだ演目でもありますので、その始まりとなるよう、勤めていきたいと思います」と、気合十分に口にしました。


武士としての運命、人としての情

 盛綱は、「武士という立場、運命と、人としての情、いずれも最たるものをもっている人間ではないかと思います。これだけ策略だらけのお芝居も珍しい。そんななかで一人の人間として生き抜いた人物だと思います」と、その人物像に思いを馳せます。「どれだけその人の情が滲みでるか、というところを表現するのが難しくも魅力的な役どころではないかと思います」。

 

 今回の上演にあたり、父(松本白鸚)からは、「母、微妙に対する頼み込みの場面の、母親に対する子どもとしての盛綱、そして和田兵衛に対しての、武士としての盛綱。対する相手によっての、気持ちの切り替えがとても大事」だと、教わったと言います。公演開始を待つ間も、「舞台が開く日までどれだけ勉強ができるか。盛綱に関しては、さらに資料を調べました」と、一段と、勉強を重ねた様子をのぞかせます。 

 

9月歌舞伎座興行への思い

 初代中村吉右衛門の功績を顕彰し、9月の歌舞伎座興行では秀山祭が行われてきました。「自分のなかでは、秀山祭の月だと思っております。奇しくも曾祖父(初代吉右衛門)の命日に、舞台稽古が始まりました。叔父(二代目吉右衛門)は療養中でございますので、戻ってくることを強く思って、曾祖父から受け継がれている歌舞伎の演目を勤められれば」と、真摯に語ります。

 

 「自分にとって縁があり、ドラマチックで、歌舞伎らしいお芝居。ぜひご覧になっていただきたいです」と、強い思いを胸に勤める幸四郎の盛綱に、期待がふくらみます。「舞台に立ってお芝居をすることが自分の役割です。今後の公演でも新たなスタイルの歌舞伎や、試みを生み出していきたいと思います。皆様に楽しんで、良い刺激を受けていただければ」と、この先の展望にも触れ、締めくくりました。

 

 歌舞伎座「九月大歌舞伎」は27日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2021/09/09