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歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」初日開幕
2023年10月2日(月)、歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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昼の部は、『天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)』で幕を開けます。物語は紅葉の北野天神を舞台に、足利将軍家の宝剣「浪切丸」の紛失という御家騒動の発端から始まります。重臣・佐々木桂之介(巳之助)は、宝剣紛失の詮議のための猶予を与えられ、家老・吉岡宗観(又五郎)の館に預けられるものの、行方がわからぬまま期日が迫ります。そこへ不思議な風体で現れるのが、天竺から帰国した徳兵衛(松緑)。徳兵衛が異国の様子をユーモアたっぷりに語る「異国話」は本作の聞きどころで、その軽妙さに観客も聞き入ります。やがて宗観が徳兵衛に秘密を明かし、妖術を伝授すると、大屋根に出現する大蝦蟇(がま)や、徳兵衛自身が蝦蟇の姿となって立廻りを見せる「水門」など、次々と摩訶不思議な妖術を繰り出します。ケレン味あふれる数々の仕掛けや演出に、客席から万雷の拍手が送られました。
続いては、日本映画界の名匠・山田洋次が、歌舞伎座で初めて演出を勤める『文七元結物語』。脚本や舞台美術も一新し、新たな『文七元結』の世界が誕生します。大の博打好きな主人公・長兵衛を獅童、そんな長兵衛の女房・お兼を寺島しのぶが勤めます。冒頭、吉原にある角海老に、長兵衛(獅童)の娘お久(玉太郎)が家の苦境を見かねて身売りにやってくる場面は、お久が両親を深く思いやる姿が描かれます。一方、娘の行方を心配し、喧嘩を始める長兵衛とお兼のテンポよい掛け合いに、客席からは笑いが起こります。角海老でお駒(孝太郎)の厳しくも温かい情けを受け、心を入れ替える決心をした長兵衛は家路を急ぎますが、吾妻橋から身投げをしようとしている文七(新悟)に遭遇し、事態は急展開していくことに…。人間を描き続けてきた名匠による人間賛歌は、長兵衛一家の家族愛や、登場人物の人情味など物語に深みを与え、場内は清々しい笑いと感動に包まれました。
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夜の部は、『双蝶々曲輪日記』「角力場」から。舞台は大坂堀江の角力小屋で、人気力士の濡髪長五郎(獅童)と、素人角力で名を上げた放駒長吉(巳之助)の取組が行われる場面から始まります。濡髪贔屓の山崎屋与五郎(巳之助/2役目)は、恋仲の遊女吾妻(種之助)を茶屋へ向かわせ、角力小屋へと入ります。取組が始まると、結果はなんと放駒が勝利。実は濡髪は、与五郎が吾妻を身請けするための仲立ちを放駒に頼みたく、わざと勝ちを譲ったことを明かすのでした。これを知った放駒は怒りを爆発させ…。大関ならではの貫禄と懐の深さを見せる濡髪、愛嬌ある放駒長吉の姿が対照的に描かれます。さらに、放駒とつっころばしの山崎屋与五郎の2役を早替りで演じる趣向もみどころです。世話狂言の人気作にご期待ください。
続いては、華やかな舞踊『菊』。一面に咲き乱れる色とりどりの菊の花。そこへ、男寅、虎之介、玉太郎、歌之助が勤める菊の精がやってきて、羽根つきに興じる様子を見せます。やがて、雀右衛門、錦之助による菊の精が現れると、艶やかにしっとりと恋心を描きます。菊の精たちがそろって戯れる姿は可憐で美しく、秋の情緒があふれるひと幕となりました。
夜の部最後は、『水戸黄門』です。舞台は四国の金毘羅様。黄門様とはぐれた格之進(歌之助)は、お蝶という美しい娘と行き会いますが、助三郎(中村福之助)の助けでお蝶が長次(虎之介)という男盗賊であることが判明します。一方、水戸の百姓老爺として、うどん屋にいた黄門様(彌十郎)は、領主松平頼常(歌昇)への領民たちの不満を耳にしますが、実は頼常は黄門様の長男で…。黄門様がうどん屋で出会った優しい娘のおそで(新悟)や、さまざまな人間関係が絡み合うなか、一行は藩の内部ではびこる悪の根源を成敗するため立ち上がります。彌十郎勤める黄門様が「はっはっはっ!」と笑顔を見せるたびに舞台上がぱっと華やぎ、そのおおらかさに自然と心が温まります。笑いあり涙ありの、すっきりと晴れ渡る舞台をお楽しみください。
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歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、10月30日(月)まで、全国各地の人気の手工芸品を週替わりで販売する、「
歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」は25日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。