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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」初日開幕
2023年12月3日(日)、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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第一部は、『旅噂岡崎猫』で幕開きです。由井民部之助(橋之助)と幼子を連れたお袖(新悟)夫婦は、主君の病平癒祈願のための道中でお袖の母親おさんがこの世を去ったことを知ります。二人は、一夜の宿を求めて岡崎の無量寺に辿り着きますが、そこにはなんと死んだはずのお袖の母・おさん(巳之助)の姿が。民部之助とお袖が客席通路を練り歩く演出も、場内を盛り上げます。おさんが次々現れる猫と戯れ、次第に化け猫の本性を現す様子に、客席の視線も釘付けになりました。
続いては、歌舞伎座初降臨となる超歌舞伎 Powered by NTT『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』。開演前には舞台美術を手掛ける中嶋正留が監修
ここへ千本桜を我が物にしようとする青龍の精(國矢)が襲いかかりますが、白狐と初音の前の娘・美玖姫(初音ミク)はそれぞれ狐と蝶に姿を変えて落ちのびます。それから千年後、美玖姫と、佐藤四郎兵衛忠信(獅童)と青龍の精による立廻りは、客席も巻き込むような大迫力。陽櫻丸(小川陽喜)と夏櫻丸(小川夏幹)の二人が花道から元気いっぱいに登場すると、陽喜がはつらつとしたせりふで成長ぶりを見せ、初お目見得となる夏幹は力強くも可愛らしい名のりと見得で観客を魅了しました。クライマックスでの獅童とミクによる宙乗りでは、客席にペンライトが光り輝き、場内の盛り上がりも最高潮に達しました。
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第二部は、中村屋ゆかりの舞踊劇『爪王』から。雪が降り積もる角鷹森。「吹雪」と名付けた鷹(七之助)を飼う鷹匠(彦三郎)のもとへ庄屋(橋之助)がやって来て、村で悪さをする狐の退治を頼みます。やがて鷹匠と吹雪は山へ向かい、鋭く牙を剥き出す狐(勘九郎)と対峙。細かい仕草の隅々に生命力と闘志がみなぎり、幻想的な世界が広がります。ダイナミックな舞踊で表現される狐と鷹の激しい闘い、鷹と人間の絆が胸に染み入るひと幕に、大きな拍手が送られました。
続いては、初演となる『俵星玄蕃』です。時は元禄15年12月13日、槍の名手・俵星玄蕃(松緑)の道場に、玄蕃が贔屓にする夜鳴きそば屋の十助(坂東亀蔵)が訪ねて来ます。二人で酒を酌み交わすうち、赤穂義士の討入りが噂される吉良邸に用心棒の仕官を誘われていることを話す玄蕃。実は十助は、そば屋に身をやつして吉良邸の動向を探る赤穂義士の一人、杉野十平次で…。
義士たちが素性を隠し、虎視眈々と吉良邸討入りの準備を進めるなかで登場する俵星玄蕃は、講談や浪曲でも有名な人物で、槍の名手である玄蕃の勇ましい立廻りは圧巻。玄蕃と十平次の心の交流、義に生きるその姿が胸に響き、客席に深い余韻を残しました。
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第三部は、『猩々』で幕を開けます。中国・揚子江のほとり。二人の猩々(松緑、勘九郎)は酒売り(種之助)に勧められるままに大好きな酒を飲むと、酒の徳を謳いながら、上機嫌に舞って見せます。やがて、酒売りに酒壺を与えて猩々は打ち寄せる波間に姿を消しますが、その酒壺は…。酒好きの霊獣からあふれる愛嬌と、格調高く朗らかな舞台に客席には自然と笑顔が広がりました。
最後は、『天守物語』です。播磨国姫路にある白鷺城の天守閣は、人間たちが近づくことのない、美しい異界の者たちが暮らす別世界。この世界の主である富姫(七之助)のもとに、彼女を姉と慕う亀姫(玉三郎)が訪れると、富姫は久しぶりの再会を喜び、土産として白い鷹を与えます。可憐で可愛らしい亀姫と、妹分の亀姫を可愛がる姿に貫禄と気品が漂う富姫、さらに亀姫に仕える朱の盤坊(獅童)、舌長姥(勘九郎)なども奇怪な存在として作品の世界観に深みをもたせます。
その夜、行方知れずとなった城主播磨守の白鷹を探しにやって来たのは、播磨守に仕える姫川図書之助(虎之介)。そこで富姫と図書之助が運命的な出会いを果たし…。美しい異形の世界の住人と、この世の人間とが織りなす、幻想的で詩情豊かな物語で観客を魅了しました。
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歌舞伎座地下2階の木挽町広場には、宮城県気仙沼市から、気仙沼帆布の期間限定ショップが12月10日(日)まで出店しています。歌舞伎座オリジナル商品もございますので、ご観劇の際はぜひお立ち寄りください。
歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は26日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。