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三津五郎 紫綬褒章受章の喜び
平成二十一年春の褒章受章者が発表され、「歌舞伎座さよなら公演五月大歌舞伎」に出演する坂東三津五郎が紫綬褒章を受章しました。
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坂東三津五郎
正直びっくりいたしました。これも父をはじめご指導を頂いた諸先輩のおかげと感謝しております。うれしい気持ちもありますが、何か身の引き締まるような思いです。さらに自分を研鑽して歌舞伎そして日本の伝統芸能の為に一生懸命つとめなさいと、使命を与えられたような感じがしています。
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今まで、"これをやるの?"みたいな、自分でもびっくりするような役に出合ってきたときの方が、役者としての広がりが出てきたような気がしています。
初めて『鳴神』のお話をいただいた時には随分戸惑いました。それが結果的に良くて、自分でも役柄がぐっと広がったように思います。
平幹二朗さんとご一緒した『獅子を飼う~秀吉と利休』という現代劇に挑戦することで、自分の新たな可能性に気が付くことができましたし、また、昨年十二月『京鹿子娘道成寺』では、女方を専門とする役者ではない自分では、もしかしたら大失敗するかもしれないと覚悟して勤めましたが、おかげさまで評価も頂き自分なりに手応えも感じることができました。かえってそういう時の方が自分にとって収穫が多いと感じています。
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おかげさまで歌舞伎は認知度が上がり、人気も出て、本当にありがたいことだと思っています。さらにこれからは、我々がもっと舞台の上で芸を競い、互いに磨き合い、しのぎ合う舞台を創り出さなくてはいけないと思っています。
また、お芝居の型にしても、踊りの演目にしても、近年上演されていない作品の中にもまだまだ良いものがたくさん残っています。それらを復活してお客様にお見せする事は、歌舞伎にとっても非常に大切なことだと思っています。
これからも"自分はこういった役"とは決めずに、自分でもまだ気が付いていない部分、まだ使っていない細胞、そういうものが活発になるような舞台にどんどん挑戦したいと思っています。そして、優しい道と難しい道があれば、難しい道を選んだ方が良いということを肝に銘じておきたいと思っています。