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鴈治郎が紫綬褒章受章
5月20日(月)、中村鴈治郎が紫綬褒章を受章することが、内閣府より発表されました。
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もう一度自分を見つめなおす受賞
「我が国の学術、科学技術、芸術、スポーツ等の向上発展に尽力」したとして、鴈治郎が紫綬褒章を授与されました。60歳という節目での受章に対し、還暦という言葉のとおり、「一から始めるというときに、受章させていただき、非常にうれしい」と述べました。「これを機に、もう一度自分を見つめなおしたい」と笑顔を見せます。
「いわゆる歌舞伎役者としてのスタートは遅い方。大学を卒業してから、就職するようにこの世界に入る形だったものですから」と、これまでを振り返ります。「同じ世代の役者たちとこんなにも差があるのか、と手も足も出ない状態に自分がいたときがあった。でもそのときに、役者を嫌いにならなかったんですよね。これまで続けてきてよかった」と、感慨を込めました。
「これまでは、祖父、二代目鴈治郎を意識することが多かったです。しかし、最近になって、父が残してくれたものに対する思いが出てきました。父がやってきたものを、今一度見つめ直してみようと思います」と、現在の心境を語ります。「立役に限らず女方でも、何でもとにかくやっていきたい」と、意気込みを見せました。
大阪松竹座「七月大歌舞伎」に向けて
上方歌舞伎を担う一人として今後やっていきたいことを聞かれると、鴈治郎が松竹新喜劇の演目をもとに、歌舞伎としてつくり上げた『幸助餅』の話に。松竹新喜劇は「泣き笑いの人情芝居」の世界であり、「歌舞伎にもって来れたらいいなと思ったのがはじめ」だと言います。
再演を重ねた『幸助餅』は、昨年12月、新たな顔ぶれで上演されました。「自分が初演したものが再演される。こんなにうれしいことはない」と喜びをあふれさせ、「他の役者さんがやったということは、もしかしたら、先々、古典になりうるのかなと。上方らしいこういう芝居を一つでも多くつくれたら」と、熱い思いを語りました。
今後の展望を尋ねられた鴈治郎は、「まず7月の序幕を見てください」と気合十分。大阪松竹座「七月大歌舞伎」の序幕は、『幸助餅』と同じく、松竹新喜劇の演目を歌舞伎として再構成した『色気噺お伊勢帰り』です。「芝居の頭から笑って喜んでいただけるような、すっと入っていただける芝居にしたい」と抱負を掲げます。上演を前に、「今は戸惑いとドキドキが入り混じっていますが、私の今後のひとつの方向性としてやっていきたい芝居でもあるので、皆さんにぜひ見ていただきたい」と、並々ならぬ思いをにじませました。