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團十郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

團十郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

 

 2025年7月5日(土)から始まる歌舞伎座「七月大歌舞伎」昼の部『船弁慶』、『紅葉狩』に出演の市川團十郎が、公演へ向けての思いを語りました。

團十郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

 

“新歌舞伎十八番”への思い

 今回の演目について、團十郎は「今年の歌舞伎座は、5月・6月に音羽屋ゆかりの演目が並び、また松竹創業130周年を記念して『仮名手本忠臣蔵』、『菅原伝授手習鑑』、『義経千本桜』と三大狂言を上演するなかで、私自身も古典をしっかりと勤めることでお客様に喜んでいただけるのではないかと考えました。“新歌舞伎十八番”は、なかなか上演されない演目も多いので、演じることは團十郎として意義のある仕事だという認識をもっています」と、心情を述べました。

 

 “新歌舞伎十八番”を制定した九代目市川團十郎について問われると、「父(十二世團十郎)から聞いたのは、歌舞伎が、伝統芸能として認識されるきっかけをつくった一人が九代目市川團十郎だったということです。歌舞伎の格を上げた功労者だと思いますが、特に当時からすると、高尚な娯楽になってしまったのも事実です。今の歌舞伎に携わる人々にとってはかなり影響のある人物ですね」と、話しました。

 

対照的に演じる

 まず『船弁慶』について聞かれると、「源義経は船出の日、恋人の静御前に別れを告げますが、今の時代と違い連絡手段もないため、これが永遠の別れになるかもしれない。そういう意味でのふたりの“別れ”を表現する舞踊です。能をもとにした松羽目物ですので、静寂のなか、別れの光景、雪が降る光景、春の鶯が鳴く光景、紅葉が散っていく光景…というものを、いかに表現していくかが重要だと思います」と、真剣な面持ちで答えます。

 

 続く『紅葉狩』については、「“変化物”ですので、『船弁慶』とは演じるうえで感覚がかなり異なります。更科姫が鬼女へと変わっていく細かな表現がとても面白い舞踊でして,その写実性やリアリズムをどう狙って表していくかというところが肝だと思います。能楽をもとにした舞踊ですが、歌舞伎舞踊としての要素も多くありますので、同じ松羽目物でも『船弁慶』とは違う工夫が楽しめる演目だと思います」と、その魅力に触れました。

 

こだわりと成長

 公演に向けて作成されたビジュアルについて聞かれると、「特に『船弁慶』の唐織(からおり)に苦労しました。今回、唐織を新たに織り直し、先生に着付けの仕方を教わり、この1着にかなりの手間暇をかけています。そんな唐織の扱いの大変さは、着てみないと…というよりも、着ても分からないのが本音です(笑)。お能の方でないと分からないように感じます」と、その苦労を笑いも交えて答えます。

 

 共演する市川ぼたん、市川新之助の成長については、「どちらも実感します。ぼたんには意外とノータッチでして、彼女のやることは彼女に任せています。芯が強いので、自分と向き合いどのように成長していくかということを判断できる子だと思っています。新之助は、5月の歌舞伎座で、同世代の皆さんと一緒に舞台に立った経験を経て、歌舞伎への向き合い方に多面性が増えたと思います。これまで以上に、歌舞伎に対しての情熱が出てきているように見えます」と、温かな眼差しで語りました。二人の成長ぶりにも期待が高まります。

 歌舞伎座「七月大歌舞伎」は7月5日(土)から26日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2025/06/14