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片岡我當さんご逝去

 歌舞伎俳優の五代目片岡我當<かたおか がとう、本名:片岡 秀公=かたおか ひできみ>さんが、5月11日(日)午後4時37分、ご逝去されました。90歳。謹んでご冥福をお祈りいたします。

 十三代目片岡仁左衛門の長男。昭和15年(1940)10月大阪・歌舞伎座『近頃河原の達引』のおつるで片岡秀公(ひできみ)を名のり初舞台。昭和46年(1971)2月大阪・新歌舞伎座『二月堂』良弁大僧正、ほかで五代目片岡我當を襲名。

 朗々たるせりふ回しに、スケールの大きな舞台姿、そして本人の誠実な人柄を映す滋味にじむ演技で、立役として上方歌舞伎から江戸歌舞伎まで幅広い役どころを勤めてきた。

 父・十三代目片岡仁左衛門から譲り受けた『近頃河原の達引』の猿廻し与次郎、『沼津』の平作、『新口村』の孫右衛門などは、素朴な人となりに情がにじみ、『仮名手本忠臣蔵』「九段目」の加古川本蔵、『熊谷陣屋』の弥陀六、『輝虎配膳』の長尾輝虎などでは、役の複雑な性根を表現した。いずれも義太夫狂言への造詣を活かした舞台であった。若き頃、二代目尾上松緑に師事したことで江戸の荒事を学び、『車引』の梅王丸なども演じた。上方歌舞伎の継承に熱心に取り組み、「上方歌舞伎会」などで上方の若手俳優の指導にも尽力した。また、長年にわたり関西における学生を対象とした「歌舞伎鑑賞教室」を行い、歌舞伎観客の裾野を広げてきた功績は大きい。

 最後の舞台は令和2(2020)年2月歌舞伎座における十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言『八陣守護城』佐藤正清。

2025/07/17