歌舞伎いろは

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新橋演舞場 四月大歌舞伎
平成23年4月1日(金)~25日(月)
公演詳細
演目と配役
みどころ

お辻と言われた時には、えーっと思いました

 3月に東日本大震災という大災害があり、東日本を中心に大きな被害が出ました。

 3月5、6日の2日間は坂東流の東北支部の講習会で宮城県の松島におりました。お稽古をし、流儀のお弟子さんたちと海辺で記念写真も撮り、松島を観光しました。その時に参加された皆さんと連絡は取れましたが、ほとんどが被災され、ご自宅を失くされた方も多い。断水の上、電気が来ないという方もたくさんいらっしゃる。他人事とは思えません。

 このような状況の中、複雑な思いがおありと思いますが、本日はインタビューをお受けいただき、ありがとうございます。新橋演舞場の「四月大歌舞伎」では昼夜で4役に出演されます。また昼の部では川口松太郎作『お江戸みやげ』のお辻、夜の部では岡本綺堂作『権三と助十』の権三という主役を初役でつとめられます。昭和と大正のそれぞれを代表する劇作家による新作歌舞伎です。まずはお辻から。結城から江戸に出てきた呉服の行商人で役者の栄紫に一目ぼれする。江戸前の粋な立役を得意とされる三津五郎さんがと意外な感じがいたしました。

 4月公演は国籍不明です(笑)。序幕から切りまで約11時間劇場で過ごし、演じるのが結城の女、大坂の男、佐藤正清、江戸の駕籠かきです。『お江戸みやげ』と話があった時には、えーっと思いましたが、これまで自分自身でも意外な役をした時の方が、収穫が多かったことを思い出し、勤めることにいたしました。『勧進帳』の弁慶や『鳴神』の鳴神上人、それに『伽羅先代萩』の沖の井などは、演じてみて新しい扉が開いたような気がいたしました。

 お辻にはどんな印象をお持ちですか。

 役者がやりだすと芝居が動き出すように書かれている。役者をがんじがらめにせず、工夫ができる余地を残している。手練れ(てだれ)の川口先生らしい本です。型があるものではありませんが、繰り返し演じていらっしゃる神谷町のおじさん(中村芝翫さん)にお話をうかがいます。お辻は40代。ポイントの一つは普段は吝嗇(りんしょく)な女が、お酒を飲むと気が大きくなるという変わり目です。もう一つは彼女にまだ色気が残っているところ。難しいのは結城から出てきたいわゆる"田舎女"と言うことですね。チャキチャキの江戸っ子の常磐津の師匠の文字辰との対比が出ると芝居として生きてくるのではないかと思います。