歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



心で感じる、素晴らしき歌舞伎の世界

―撮影が終わり、編集作業で一番苦心したところはどんなところですか。
撮影は編集のための材料集め。 ドキュメンタリーにおいて、編集は演出的要素が大きいとても重要な作業です。
総合的に考えて編集していかないといい流れができません。今回はエンターテインメント性が強い作品なので、編集と同時に音楽創りも行いました。最近はナマ音に近い音楽がコンピューターで出来るので、それで試作しながら何度も検討を重ねました。作曲の土井さんは本当に辛抱強く、私の意見を取り入れてくれました。最終的にはナマの楽器で録音をしましたが、とても満足しています。

ドキュメンタリーでは音楽が聞こえないくらいがいいという考えもありますが、音楽が語りすぎたらいけないけれど、音楽があることで、より見やすくなります。
また歌舞伎の映画だからと言って、和風の旋律をつけてはいません。歌舞伎への俳優さんの想いというのは普遍的なもの。誰の心にも入るような音楽をつけたつもりです。和風の旋律じゃなくても違和感なく歌舞伎の映像にマッチしているのは、歌舞伎がグローバルなものだからだとも思っています。
そして今日、倍賞千恵子さんがナレーションを入れて下さいました。最後の作業となりましたが、終わった時の倍賞さんの笑顔がとても素敵でしたよ。

―この映画は、歌舞伎ファンにとっては万感胸に迫るものがあり、きっと熱く込み上げる思いを抱くと思います。
本来、映像と音の力は心に伝わるものだと思っています。情報よりも情感を大事にしたいと考え、今までこの仕事をして来ました。
今回歌舞伎座の記録映画を作るに際し、見た目を記録するのではなく、今この時代の俳優さんたちが何を考え、どんな想いで演技をしていたのかなど、俳優さんたちの心の世界を記録したいと思いました。
確かにレンズに映るものしか撮れませんが、実際その奥にあるものが何か、と常に考えて撮影していました。

歌舞伎座は素晴らしい世界でした。歌舞伎について、この作品に携わる前は引きのレンズで見ていたようなところがありました。
今回クローズアップで実際に触れてみると、裏方さんも俳優さんも一日、一瞬に魂を込めて臨んでいる。ここまでやっていたのかと…正直なところ驚かされましたし、感動もしました。