歌舞伎いろは

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福井利佐を生み出した、切り絵との出会い

Profile

福井利佐(ふくい りさ)
静岡県出身。切り絵作家として幅広く活動。受賞歴として1999年、JACA日本ビジュアルアート展特別賞を受賞(海外巡回)。切り絵という作風ながら、描写のきめ細やかさが話題になり、話題沸騰。プロダクトとして初の試みだったReebokとのコラボレーションスニーカーや、中島美嘉のジャケット(写真下)、ステージ装飾、東京コレクシェン参加ブランドとのコラボレーション、オリジナル映像制作、広告、ポスター等、型にとらわれない活動フィールドは新たな切り絵業界の継承者との呼び声も高い。

 

 「力を入れ過ぎているせいか、どうしても変形しちゃうみたいで…」と少し恥ずかしそうに見せた、利き手の人差し指。上向きに反り返り、指の腹が平らに変形している。その指から、作品作りにかける熱が伝わってくる。

 福井さんの作品は、一枚の絵として見ても繊細かつ力強い。漆黒のラインと配色が斬新で印象的だ。その手法は全て切り絵。デザイン用カッターで下絵をなぞり、切り抜いてゆく。長時間の作業工程を想像してみても、指が変形してしまうのが頷ける。

 切り絵との出会いは中学生。「切り絵クラブ」に所属していた中学1年の頃に、切り絵の世界に初めて触れ、その面白さを知った。

 「切り絵は幼い頃から、絵本で見て知っていたんですが、初めて自分で作ったのは中学生のクラブ。はじめは古い町並みなんかをモチーフにしていました。楽しかった。でも、将来、切り絵を作っていく作家になるとは、夢にも思わなかったですね」

 好きだった切り絵からは中学生時代で離れ、そのまま「楽しかった思い出」になり、作品を作ることはなかった。福井さんが切り絵を「現実の作品の手法」として再び取り戻したのは、美術大学の頃。「他の学生の絵の上手さには敵わない。自分のオリジナリティーは何か?」という疑問にぶつかったとき、「楽しかった切り絵」を思い出す。切り絵作家・福井利佐の目覚めた瞬間。そこから、現在に至る切り絵での作品作りが始まった。