歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



現代アートとの融合で進化を目指す「伝統の民芸」

 どの作品からも、共通して感じるほのかな和のテイスト。その理由は、能面や日本の風景などをモチーフにしてきたというだけではない。

 「私自身、和のモチーフが好き。歌舞伎や能などを見に行き、伝統芸能の世界から、作品の閃きを受けることもあります」

 本来、切り絵は静止しているモチーフが多いが、自分の作品では「生きているもの、動いているものを表現してみたい」という福井さん。その中でも、日本の伝統芸能にインスピレーションを受けるのは「切り絵の民芸的な手法と、日本の伝統的なものがマッチしているから」だという。

能面をモチーフにした作品2点。学生の頃から、伝統芸能に高い関心を持っていた。

 「切り絵は民芸=大衆の芸術として、昔から愛されてきたので、とても大切。守っていくべきものだと思っています。日本の風土や生活習慣に合わせて発展してきた伝統のものと、現代アートの様式にあったものを融合して進化させる。それが私の目指す作品作りです」

取材・文 山本理愛 写真 水沢竜一