歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



日々の感動を共有することが、新しい伝統を作る

 「僕にとって、毎日がとても新鮮です。何気ない事にも、とても感動する。僕にとって、芸術とはそういうもの。決して特別ではない。毎日がアートの連続です」

 様々なアーティストと組み、書道の垣根を越え、精力的に活動する双雲氏。
 そんな双雲氏が考える“伝統”とは「固執して守りに入ると破壊されてしまうもの」だという。
 「人の役に立ったり、心を打つものが、後世で『伝統』と呼ばれる。それに固執して、頑なに守っていると、破壊されてしまう。時代や価値観はいつも変化する。だから、常に新しい空気を取り込み、進化させていく。それが理想」

 大きな事をやらなくてもいい。毎日の小さい事に感動をする。味わう。そんな幸せの形を、書に込めて伝えていければ良い、と双雲氏は言う。そして今日も、垣根のない彼の書が、人々の心に感動と新鮮な空気を送り込む。新しいタイプの書道家、武田双雲。彼こそ『伝統』を作っているのかもしれない。

 「道を極ようとは思わない。
 歩いた跡が道となるのだから。
 だからこそ『今』を『自分の足で』しっかり歩こうと思う。」
(武田双雲ホームページ内『短い日記』6月6日分より)

取材・文 山本理愛 写真 水沢竜一