歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



『菅原伝授手習鑑 寺子屋』武部源蔵
(平成13年8月 歌舞伎座)
撮影:松竹株式会社
『お祭り』鳶頭
(平成21年9月 歌舞伎座)
撮影:松竹株式会社
 
新橋演舞場五月花形歌舞伎
上演時間
演目と配役
みどころ
 

『寺子屋』の源蔵は二度目、『助六』の白酒売は初役

 昼の部では『寺子屋』の武部源蔵を演じられます。2度目のお役で、5月は昼の部・夜の部とも子供を殺すという大変な役柄となってしまいました。

 「武部源蔵は以前にも演じたことがありますが、これも重いお役です。主君菅丞相の子・菅秀才を守るために、寺子屋に入ってきたばかりの小太郎(実は松王丸の子)を殺さなくてはならない。『寺子屋』は子供のころからあこがれてきた芝居ですが、実際に演じるのは大変です。菅秀才の首を差し出せと言われ、どうすればよいのか深く悩みながら家に戻る花道の出のシーンも本当にむずかしいのです。ただこれも、お客様に命の尊さが伝わることを目標に演じたいと思っています」

 「せまじきものは宮仕え」(源蔵)「持つべきものは子でござる」(松王丸)など、印象に残る名せりふがたくさんある芝居です。

 「熊谷もそうですが、結局は無常観に行きつくところが日本人らしいのかもしれません。他人の子であっても小さな子供を殺すのはつらく、苦しいこと。身代わりとなる松王丸の子・小太郎の首を打つときも、お客様からは見えませんが、気合を入れて刀を振るいます。源蔵の苦しみに共感を持っていただくために、しっかりと演じたいと思います」

 『お祭り』の鳶頭は何度も踊っていらっしゃって、すっきりした雰囲気がぴったりですが、『助六』の白酒売は初めてですね。

 「僕の初役というより、高麗屋としても初めてではないでしょうか(笑)。父ももちろん、演じたことがありません。僕はいろいろと上方のお役もやらせていただきましたので、柔らかな和事の動きも学ぶことができました。それを見ていてくださったから今回の役がついたのだと思います」

 近松の作品をずいぶん演じられています。歌舞伎座でおやりになった『女殺油地獄』も好評でした。

 「十分にその時の経験を生かしたいと思っています。熊谷を演じた役者がそのあとで白酒売になって出てくるということに、びっくりされるお客様がいらっしゃるかもしれませんが、それが歌舞伎の面白さだと思いますので、楽しんでいただきたいですね。白酒売は、勘三郎のお兄さんに教えていただきます。その日の芝居がにぎやかな『助六』で終わるのは、役者としても気持ちのよいものです」

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