歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

信じて努力し続けること、夢を持つことを大切に

 5月から歌舞伎座が建替えのために閉場します。新しい歌舞伎座ができるまでの3年間をどのように過ごしたいとお考えですか。

 「『歌舞伎座さよなら公演』はもちろんですが、新しい歌舞伎座の誕生にこの年齢で巡り合えるのは誰にでもあることではなく、いいけじめ、いい区切りとなるでしょう。しかも、4月に父や叔父たちが演じた演目をさせていただける。これはある意味で、僕たちがどこまでできるかというテストなのです。4月まで歌舞伎座に来てくださっていたお客様がそのまま新橋演舞場に来られるとは限りません。3年間僕たちがしっかりと勤めなければ、歌舞伎から離れてしまう方もいらっしゃるかもしれない。緊張感を持って演じ、また次のチャンスをいただけるように頑張ります」

 染五郎さんは伝統を重んじる歌舞伎の家にお生まれになった一方、現代の都会の青年でもあります。歌舞伎の世界だけにある「日本の心」「日本人の心」を感じられることはありますでしょうか。

 「歌舞伎の世界に最も生きているのは、ひとつのことにこだわるところでしょうか。ほかの世界にもあるとは思うのですが、少なくとも歌舞伎の世界では、目に見えない目標に向かい一生をかけて努力し続けるわけです。迷いがあっても、とにかく信じて努力を続ける。そうすればすごいパワーが生まれるものです。芝居には、はっきりした正解不正解があるわけではありません。お客様だって毎日変わります。求めていらっしゃるものも違うでしょう。初めての方、1カ月に何日も通う方……。そういう方すべてに、“今”、共感していただかなくてはならない。信じきれないと、説得力もなくなると思うのです」

 ご長男の金太郎さんにも「信じる大切さ」を伝えたいですか。

 「そうですね。頑張ればできるということ、自分を信じること。そのために、一生懸命稽古をすること。そして、大きな夢を持つことの大切さも伝えていきたいと思っています。夢があれば、くじけそうになったときでも自分を信じて頑張れると思いますから」
 
 

市川染五郎

昭和48年1月8日生まれ。松本幸四郎の長男。54年3月歌舞伎座『侠客春雨傘』で三代目松本金太郎を名のり初舞台。56年10・11月、歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』七段目の大星力弥ほかで七代目市川染五郎を襲名。舞踊の松本流家元・松本錦升を兼ねる。著書も多数あり、2010年3月には『歌舞伎のチカラ』(集英社)を出版した。

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