歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

子供たちに伝えたい精神とは

 勘太郎さん、七之助さんの二人の息子さんも、精進の成果が出て立派な舞台を勤めていらっしゃいます。子育てにおいて、ぜひ伝えたいと思っていらしたことは?

 「とにかく芝居だけは大切にさせたいと思い、厳しく育てたつもりです。歌舞伎役者の家ですからそれは当然ですが、この前息子たちが“孫ができても、僕たちを叱ったときのようにやってくれなきゃダメだよ”って言うんですよ。そう言ってもらえてよかったと思います。
 ただ、役者として立派なだけじゃあダメ。人間としてもちゃんとしてもらいたい。僕のおじいさん(六代目尾上菊五郎)は“偉い人でも物乞いでも、対する時は同じ態度であれ”とおふくろを育てたそうですが、おやじ(十七代目中村勘三郎)もまったく同じ方針でした。僕と女房も、それだけは息子たちに伝えたいと思っています。誰に対しても態度を変えない。そして情がある。そんなことを伝えていけたならうれしいですね。

 『御名残四月大歌舞伎』で『連獅子』を息子たちとやらせていただいた際、女房が観ていて“勘太郎は子供の時初めて踊ったときのやり方で踊っていた”と言ったんです。初めての『連獅子』も歌舞伎座でした。だから最後の歌舞伎座公演では初心に返ろうと思ったのでしょう。そういう勘太郎の心根がうれしかったですね。これからも、こうやって少しずつ、大切なことを受け継いでいかれたらいいと思っています」
 
 

中村勘三郎

昭和30年生まれ。3歳で歌舞伎座『昔噺桃太郎』の桃太郎役にて中村勘九郎を名乗り初舞台。平成17年3月から5月、歌舞伎座の『一條大蔵譚』の一條大蔵卿などで十八代目中村勘三郎を襲名。コクーン歌舞伎や平成中村座を立ち上げ、一昨年は『夏祭浪花鑑』のヨーロッパ公演後、シアターコクーンで凱旋公演も行い、大きな話題を呼んだ。

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