歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

「耐えること」で美しく輝く日本の心

 歌舞伎は日本の伝統芸能です。特に女方は歌舞伎の中だけに生きる特別な存在でもあります。女方でいらっしゃる孝太郎さんは、歌舞伎の中に残っている「日本の心」とはどのようなものだとお考えでしょうか。

 私は日本人の美しさとは耐えることにあると思うのです。あえて表現しない抑えた心。あるいは、耐えることからにじみ出る動きの美しさを大切にしたいと思っています。
 以前、女優の山田五十鈴先生とお食事をご一緒したことがあります。先生はドレス姿でいらしたのですが、お塩をお取りになるときのしぐさがハッとするほどの美しさでした。「絵になる」とでも言うのでしょうか。それは普段から着物を着ている方だけが持つ美しさだったように思うのです。「ああ、これが正しい体の使い方なのだ」と感激しました。
 女方は「脇を締める」とか、「膝から下だけで歩く」など、注意すべき点をいろいろ教わります。股の間に紙をはさんで落とさないように動けば、自然に女らしく見える、とおっしゃった方もいます。私の工夫としては、普通なら着物を着つけたあと動きやすいよう一度股を割るところを、あえて割らない。もちろん動きづらいですよ。でも動きづらくしておいて、着つけが崩れないように動いた方がお客様がご覧になったときにはきれいなのです。


 まさに耐えることから生まれる美しさですね。

 女性にはもともと耐える力が備わっているのではないでしょうか。最近は歌舞伎の裏方である床山さんや衣裳さんにも女性が増えてきましたが、本当に頑張っています。男の人はなかなか続かないらしいですが(笑)。出産後も続ける方もいて、すごいなあと感心します。

 歌舞伎俳優さんのおうちも、裏方である奥様方のお力が大きいですね。

 何かを成し遂げる男の陰には素晴らしい女性がいるということでしょうか。竜馬だって、おりょうがいなかったらあれほどのことができたかどうかわからないですよ。

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