歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

これからも伝えてほしい日本の伝統文化

 長男の千之助さんも小学5年生。これからが楽しみです。

 幸い芝居が好きな子で、お稽古や舞台では頑張り屋さんでもあります。家にいるとやんちゃで困りますけれどね。うしろを向いていたら何をされるかわからない(笑)。ボールが飛んでくることなどしょっちゅうです。

 孝太郎さんが子供のころ、高熱を出されても「パパが頑張っているから僕も頑張るよ」と舞台を勤められたそうですね。

 そんなことがありましたね。千之助も『鏡獅子』の胡蝶をやらせていただいた時、高熱を出したのですが、点滴を打ちながら休まず勤めてくれました。別に私が言い聞かせたわけではなく、舞台をきちんと勤める大切さを子供なりにわかっていたのだと思います。父も千之助が舞台に出るたび、きちんとダメ出しをしてくれます。孫にはもっと甘いかと思っていましたが、まるで息子のように厳しく教えていますね。
 私も祖父(十三代目片岡仁左衛門)からもたくさんのことを教わりました。祖父は目が不自由になってからも私の舞台を見てくれて、気づいたことを何くれとなく教えてくれたものです。「昔はこうだったんだよ」とか「こうしてごらん」とか。特に「大切なのは役になりきること。それができていれば何をしても間違いはない。位取りを間違えず、役の生きざまが出ていれば、どっちから足を出したってかまわないんだよ」と言われたことは、深く心に残っています。こういうことも、千之助に教えていきたいと思います。


 これからも伝えていきたい「日本の心」とはなんでしょう?

 私としては「日本の心」も大切ですが、まず歌舞伎のよさを伝えていきたい。そのためにも、ぜひ歌舞伎をご覧いただきたいと思っています。まだ観たことがないという方も、ほとんどが食わず嫌いなのです。海外に出ていく日本人はますます増えるでしょうが、そこで日本をきちんと語れるかどうかが問われるのではないでしょうか。日本の文化について胸を張って語っていただくためにも、ぜひ歌舞伎を観にいらして下さい。
 
 

中村勘三郎

昭和43年生まれ。十五代目片岡仁左衛門の長男。48年7月歌舞伎座『夏祭浪花鑑』の市松で片岡孝太郎を名乗り初舞台。行儀のよいしっかりとした演技に定評があり、テレビや映画での活躍も多く、アメリカ映画『太陽の帝国』、テレビドラマ『白い巨塔』、日本映画では信州・伊那谷に伝わる地芝居を題材にした『Beauty』(2008年)に主演した。

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