歌舞伎いろは

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八月花形歌舞伎
公演詳細
演目と配役
みどころ
 
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演目と配役
みどころ

凱旋公演、そして初の試みに挑む

 大きな成果を得て、今度は凱旋公演です。新橋演舞場の「八月花形歌舞伎」では第一部で「訪欧凱旋公演」として『義経千本桜』の“忠信篇”に挑まれます。前回の新橋演舞場で上演された時も宙乗りに挑戦されましたが、今回もまた拝見できますね。近年、このような大役を次々に演じられ、楽しみな反面、大変だろうなと心配にもなります。

 大変です、やっぱり(笑)。でも人間って限界にぶつかり、それを乗り越えて大きく育つものだと思います。僕は日々限界にぶつかるようなお仕事をさせていただいているので、本当にありがたいですね。“忠信篇”を通して演じるのだってけっこう大変なんですよ。ときどき脳みその線が切れそうになることもありますから。でも限界を乗り越えると、ものすごく自分のキャパシティが広がるのを感じることも事実なんです。だから「やるしかない!」と思っています。

 第二部は『京鹿子娘道成寺』で押戻しの大館左馬五郎照剛を、そして第三部は『東海道四谷怪談』で民谷伊右衛門を演じられます。伊右衛門は初役ですね。

 勘三郎のおにいさんに「息子(中村勘太郎さん)がお岩様をやるんだから、伊右衛門をやってよ」とおっしゃていただきました。僕にとっては初役となりますので、まず父に習い、役にしっかり取り組みたいと思います。そして、勘三郎のおにいさんにも指導していただきながら、折り目正しく丁寧に勤めます。伊右衛門は悪の基準をどこに置くのかがむずかしいお役ですから、いろいろとご相談し、勘太郎さんや七之助さん、そして獅童さんたちとも力を合わせてよい舞台にしていきたいですね

 海老蔵さんは色悪の伊右衛門にはぴったりだと思います。お岩を演じられる勘太郎さんの演技ともども、大いに期待しております。9月には京都の南座で『九月大歌舞伎 通し狂言 義経千本桜』に挑まれます。これは知盛、権太、忠信を1日でおやりになるという大変な挑戦となりますね。

 父が以前、国立劇場での公演で1カ月のうち1日か2日、通しでやらせていただいたことがあります。あのとき、父はだいぶ痩せたそうです。白血病の抗がん剤治療でも体重が減らなかった強い人が、『義経千本桜』では痩せるんです。
 9月の南座のように、毎日一人の役者が昼の部で「鳥居前」「渡海屋」「大物浦」「道行初音旅」を、夜の部で「木の実」「すし屋」「川連法眼館」「蔵王堂」をやり、何日かは“忠信篇”として演じるという試みは初めてだろうと思います。知盛、権太、忠信のどれかひとつだけでも演じるのは大変なことですし、やらせていただけるのがありがたいお役。それを1カ月間一人で演じられるのですから、本当に幸せなことだと思っています。


  珍しい「蔵王堂」もつきますし、楽しみですね。そして、坂東玉三郎さんが静御前のお役で出演なさいます。

 ありがたいことです。玉三郎さんは大好きな先輩です。毎日気づいたことは必ずおっしゃって下さる。それがとても嬉しい。厳しい先輩と1カ月ずっとご一緒できる素晴らしいチャンスです。

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