歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

世界で競って育つ日本の伝統文化

 ところで、海老蔵さんが海外にいらっしゃっている間、ちょうどサッカーのワールドカップが開催されていました。お忙しくてご覧になる暇はなかったかもしれませんが。

 いいえ、観ましたよ! 日本代表の活躍が素晴らしくて感動しました。行く前は1勝もできなくて、デンマーク戦は消化試合になるんじゃないかなどと言われていたのに、本当にチーム全員が頑張って……。オランダ戦の時はローマで舞台稽古をしていたのですが、なんとか1時間だけ休憩時間を作って試合を見ようと思っていました。ところが、なんとテレビの地上波ではやっていないんです! そこで街に出てスポーツバーを探したけれど、やっていたのはオランダ系の店だけでした。店内はオレンジ1色(笑)。僕たちは日本代表のユニフォームを着ていたので、一緒に行った人が「入ったらまずいんじゃないですか?」と心配したけれど、「大丈夫!」と入っていきました。そうしたら一斉にみんなに見られましたけれど。
 負けてしまいましたが、いい試合でしたね。デンマーク戦は帰国してすぐでしたから、ちゃんと観戦しました。いきいきと選手たちが躍動していて、素晴らしかった。みんな格好良かったですよね。


 選手たちがどんどん海外に出て行って、世界を知るようになってくるともっと強くなりそうな気がします。どんな分野でも同じことが言えそうですね。自分で枠を作るのではなく、直接世界に触れることで飛び越えられることもあるのではないでしょうか。

 そうだと思うなあ。このインタビューは「歌舞伎美人(かぶきびと)」のサイトに載るんでしょう? でも僕は全然合わないかもしれない。僕は殻を破って世界に出て行きたいと思っているのだから、「歌舞伎びと」ではなく「世界びと」に変えてください(笑)。
 僕は日本という枠の中で自分をとらえるのではなく、世界の中の自分を大きく育てたいと思っています。それによって日本の良さや、歌舞伎の素晴らしさがもっとわかるし、世界の人にも伝わっていくと思うんです。


 大きな夢をお持ちですね! ますます凱旋公演が楽しみになってきました。期待しております。
 
 

市川海老蔵

昭和52年12月6日生まれ。十二代目市川團十郎の長男。60年5月歌舞伎座『外郎売(ういろううり)』の貴甘坊で七代目市川新之助を名乗り初舞台。平成16年5月歌舞伎座『暫』の鎌倉権五郎ほかで十一代目市川海老蔵を襲名。同年10月パリ国立シャイヨー劇場で襲名披露。スケールの大きな演技と美貌は日本のみならず世界で高く評価されており、将来の歌舞伎界を背負って立つ逸材として期待が集まっている。
今年年7月には海老蔵、初の対話集『市川海老蔵 眼に見えない大切なもの』を出版。

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