歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



昨年の錦秋特別公演『芯』では、和太鼓の林英哲さん、津軽 三味線の高橋竹童さんと競演。伝統芸能の技をコラボレーションした。 撮影:二階堂健、協力:『演劇界』(演劇出版社)

昨年の錦秋特別公演『芯』より 『二人椀久』を踊る勘太郎さんと七之助さん。 撮影:二階堂健、協力:『演劇界』(演劇出版社)
 
中村勘太郎 中村七之助
錦秋特別公演
平成22年9月8日(水)〜9月24日(金)

公演詳細

自分の舞台で日本文化の豊かさを伝えたい

 9月にはもうすっかりお馴染となった『錦秋特別公演』で全国をまわられます。七之助さんとお二人で、舞踊を中心に構成される舞台ですが、楽しみにしているファンの方が多いでしょう。

 二人だけで公演するようになって6年目になりました。全国をまわりますので、歌舞伎をご覧になること自体が初めてというお客様もたくさんいらっしゃいます。そういう方たちは固定観念などがなく、純粋に歌舞伎を楽しんでくださいますね。あるファンの方からのお手紙に、「『錦秋特別公演』をきっかけに、東京まで歌舞伎を観に行くようになりました」とあって、とてもありがたかったです。やはり、続けることが大事ですね。以前おうかがいしたところの方も「また来てください」とか、「来年も来てもらえるの?」とおっしゃってくださることが多く、とても嬉しく思っています。主要な都市を除くと、一度行ったところは翌年は外し、できるだけいろいろな町にうかがうことにしていますので、なかなか続けてうかがうわけにはいきませんが。

 昨年は太鼓の林英哲さん、津軽三味線の高橋竹童さんとのコラボレーションでした。

 最近、僕の同世代の人たちはどんな分野の人でもみな海外での活躍を目指します。それはとても大事なことです。でも、僕は日本にもっと目を向けてもらうための活動を大事にしていきたいと考えています。なぜなら、ヨーロッパや中国、韓国などの人たちは自国の文化に誇りを持ち、尋ねられれば詳しく説明することができるのに、日本人は自国の文化について語れない人がとても多い。それではいけないと思うのです。
 去年、林さんや高橋さんとコラボレーション『芯』をさせていただいたのは、そんな問題意識があったからです。1日の公演で太鼓、津軽三味線、歌舞伎と三種類の文化が楽しめて、最後には融合した舞台もある。お客様にとても喜んでいただけました。


 勘太郎さん自身は歌舞伎以外のことに関心があってもお忙しくて、なかなか観に行く時間がありませんね。

 そうなんです。だから去年の公演でずっと林さん、高橋さんとご一緒できたことはとてもよい体験でした。お二人の舞台にかける思いや心構えを身近に拝見できて、たくさんのことを吸収できたように思います。今年はスケジュールの関係で実現しませんでしたが、これからも続けたいと考えています。

 今回の演目について教えてください。

 今回は「原点に戻る」という思いがあり、初めてご覧になる方にもわかりやすい演目を選びました。『橋弁慶』は京の五条橋で牛若丸と弁慶が戦った話ですし、『あやめ浴衣』は日本舞踊や鳴物をお稽古するなら一度はさらう曲。『浦島』は浦島太郎のお話、『藤娘』もおなじみの舞踊です。最初から大体のところがわかっているものばかりなので、「これはいったいどんな話?」と考えることなく気楽に楽しんでいただけると思います。僕と七之助の芸談もありますから、こちらもぜひお楽しみに。

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