
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
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「日本の心」が感じられる歌舞伎が大好き
愛之助さんは一般のご家庭で育ち、松竹芸能に入って歌舞伎の子役を勤めていらっしゃいました。
そうです。でも子役を勤めているうちに学校に行けないことが増えて、だんだん勉強がわからなくなってきたので、「そろそろやめようか」と実家の両親と相談していたのです。そうしたらその月に、現在の父の秀太郎から「うちに入らないか」とお話があったのですから、まったくの偶然ですね。父(秀太郎)とは特に共演が多かったわけではなく、僕自身歌舞伎俳優になろうとも思っていませんでした。でもそれがきっかけとなり、歌舞伎の世界に入ることになりました。父(秀太郎)は「この世界で生きていくなら、お父ちゃんの部屋子(十三世仁左衛門の内弟子)になったほうがいい」とおっしゃってくださり、京都の嵯峨にあるお宅まで挨拶に伺いました。すると、僕のことなどほとんどご存じなかったはずなのに快く会ってくださって、「わかった」と部屋子にしてくださったのです。それからずっと、朝から晩までおそばにいてお世話をさせていただきながら、たくさんのことを教えていただくようになりました。 十三代目は上方の歌舞伎も江戸の歌舞伎も実によくご存じで、しかも長く舞台に立たれた名優です。芸談を本にまとめられるほど博識の方でしたね。 朝はお迎えに行き、楽屋でお世話をし、帰る時もご自宅やホテルまで車でお送りする。お風呂で背中を流し、着替えもお手伝いし、ご飯を食べてお休みになるまでずっと一緒。そういう生活が続きましたが、十三代目の近くにいることができて本当に幸せでした。十三代目は僕などにも「今度、こんなふうにやってみたんやけど、どうやった?」とお訊きになるんですよ。もちろん僕に何か言えることなどなかったのですが、大変な情熱をお持ちの方でした。 でも本当に残念なことに、当時の僕はまだ大きなお役をいただくこともなく、十三代目に質問しようにもどうしてよいかわからなかったんです。『壺坂霊験記』や『近頃河原の達引』なんて、お元気だったらどれほど訊きたいことがあるか。お墓参りしたら教えていただけるといいのですけれど・・・・。 上方の香りが漂う品のある俳優さんでした。上方の香りという点ではお父様もたっぷりお持ちです。 そうですね。『封印切』の井筒屋おえんや、『仮名手本忠臣蔵』の一文字屋お才など最高です。僕は自宅が大阪にあるのですが、1年のうちいられるのは2カ月ぐらい。でも上方の役者としてやっていきたいですし、一生関西に住む覚悟です。 偶然が積み重なって片岡家に入れていただき、歌舞伎俳優となった僕ですが、今では本当に歌舞伎が好き。ほかのお芝居や映画に出ているとき、それも素晴らしい体験なのですが、「ああ、歌舞伎がやりたいなあ」と思うんですよ。それだけ歌舞伎は奥が深い芸能なんでしょうね。 |
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MADE IN NIPPON! 第11回 市川染五郎
意欲的に幅広い活躍を見せる市川染五郎さんに、新橋演舞場3月の『源氏物語 浮舟』と、4月の四国こんぴら歌舞伎大芝居『鯉つかみ』を中心に抱負をおうかがいしました。
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MADE IN NIPPON! 第10回 市川亀治郎
歌舞伎の伝統を受け継ぎながら、現代性を果敢に注ぎ続ける亀治郎さんに、「二月花形歌舞伎」(ル テアトル銀座)の抱負を語っていただきました。
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MADE IN NIPPON! 第9回 片岡愛之助
生まれ育った関西発祥の上方歌舞伎、豪快な江戸歌舞伎の役柄を演じ分け、1月2日から始まる「新春浅草歌舞伎」で初役ばかり3役を演じる愛之助さんに、役に取り組む心構えや片岡家(松嶋屋)に伝わる「日本の心」についてうかがいました。
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MADE IN NIPPON! 第8回 尾上菊之助
清潔な美貌と澄んだ声、確かな演技力で人気を集める尾上菊之助さん。この12月には日生劇場の「松竹大歌伎」で、通し狂言『摂州合邦辻』の玉手御前という大役を演じます。公演を間近に控えて、心構えをうかがいました。
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MADE IN NIPPON! 第7回 尾上松緑
11月は坂東三津五郎さんと全国巡業「松竹大歌舞伎秋季公演」で『泥棒と若殿』『身替座禅』に、また、12月の日生劇場「十二月大歌舞伎」では『摂州合邦辻』『達陀』にご出演の尾上松緑さんが登場。
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MADE IN NIPPON! 第6回 中村橋之助
錦絵から立ち現れたような風貌と長身のすっきりした姿で、人気の二枚目として大活躍の中村橋之助さん。9月の巡業を経て、いよいよ10月、11月は「大阪平成中村座」に挑みます。「大阪が大好き」と語る橋之助さんに、心構えなどをうかがいました。
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MADE IN NIPPON! 第5回 中村勘太郎
9月は恒例の『中村勘太郎 中村七之助 錦秋特別公演』、そして10月、11月は大阪平成中村座にご出演。多彩な役柄を演じながらますます活躍の場を広げる勘太郎さんの心意気をうかがいました。
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MADE IN NIPPON! 第4回 市川海老蔵
結婚という人生の大きな節目を迎えた海老蔵さんが登場。東京と京都で行われる訪欧凱旋公演への意気込みをうかがいました。
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MADE IN NIPPON! 第3回 片岡孝太郎
大阪松竹座 関西・歌舞伎を愛する会結成30周年記念 七月大歌舞伎で大役の『妹背山婦女庭訓』のお三輪をはじめ、4役を勤める孝太郎にご登場いただきました。
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MADE IN NIPPON! 第2回 中村勘三郎
今度のコクーン歌舞伎は胸を打つ感動のドラマ『佐倉義民傳』。あっと驚く新しい演出や企みがさまざまに仕組まれているようです。いったいどんな舞台になるのでしょうか。
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MADE IN NIPPON! 第1回 市川染五郎
21世紀に生き、歌舞伎の「芸」と「心」を受け継いでゆく俳優たちへのインタビューを通して、「日本の心」を呼び覚ます「歌舞伎の魅力」に迫る新連載です。