歌舞伎いろは

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『三人吉三巴白浪』お坊吉三 (平成21年11月 新橋演舞場)  撮影:松竹株式会社
公演詳細
演目と配役
みどころ
 

片岡家に入って素晴らしい師匠に恵まれました

 「新春浅草歌舞伎」の『三人吉三』では和尚吉三を、『壺坂霊験記』では沢市と、昼夜「坊主」でご出演です。『三人吉三』では以前お坊吉三をなさいました。

 あのときも通し狂言での出演でした。叔父の仁左衛門に稽古をつけていただいたのですが、叔父は「大川端」のあとの部分はお嬢吉三、お坊吉三、和尚吉三という3人のアウトローの若者が生きて行く姿なのだから、「今」の僕の感覚で演じたほうがいいとおっしゃって、「大川端」だけ稽古してくださいました。「後輩に一度教えたことがあるけれど、『大川端』以外は彼らの演じ方にまかせてみた。そうしたらすごくよかったから」と。

 「大川端」は歌舞伎好きのお客様なら「月も朧に白魚の~」などの名セリフをそらんじているほど有名な場です。しかしかえってそれがむずかしいんです。黙阿弥らしい七五調の美文が続き、つい単調になりがちで、せりふの内容がお客様の耳に残らないこともあります。せりふをずらずら連ねるのではなく、三人で息を合わせながらお客様に伝えるべきことをきちんと伝えていくやりかたを、きっちりと叔父に教えていただきました。今回の和尚吉三は橋之助兄さん(中村橋之助さん)にご指導をいただきます。


 『壺坂霊験記』は文楽を歌舞伎に移したものですね。目の見えない沢市と女房お里の夫婦愛と仏教信仰をからめた名作です。上方のものですので、上方の役者さんである愛之助さんが演じられるのがとても楽しみです。

 沢市は伯父の我當に教えていただきます。もともと祖父の十三代目(十三世片岡仁左衛門)が得意としていたお役ですし、伯父も何度か演じていますので、祖父のやり方を教えていただけるでしょう。伯父の我當には、秋の「永楽館大歌舞伎」(兵庫県豊岡市出石)の興行で、やはり文楽から歌舞伎に移した『近頃河原の達引 堀川与次郎内の場』の猿廻し与次郎を演じさせていただいた際、細かく教えていただきました。これは「片岡十二集」(十一世片岡仁左衛門が撰じた松嶋屋のお家芸としての演目)のひとつで、十三代目と伯父の我當がたびたび勤めたものですが、最近上演されていませんでしたので、ぜひ僕がやらせていただきたいと思っていた役なんです。この時も快く教えていただき、遠い出石(いずし)まできてくださって最後までいろいろと学ぶことができました。


 我當さん、仁左衛門さんは立役の大先輩でもあり、上方の歌舞伎を得意とされていますから、教わることが多いですね。お父様の秀太郎さんは女方ですが、また別の視点からのご指導があるのでは?

 そうですね。父は十三代目の相手役をたくさんつとめ勤めました。また、何度も同じ役を共演していますので、どのように十三代目のやり方が変わっていったのかもずっとそばで見ていて、それを僕に教えてくださいます。立役がどうすれば女方さんが演じやすいかということも教えていただけるのがありがたいですね。いわば僕には身近に3人も師匠がいるようなもの。僕は一般の家から歌舞伎の世界に入った人間ですので、片岡家に入れていただいたことに本当に感謝しています。

 『黒手組曲輪達引』の紀伊国屋文左衛門も楽しみです。

 『黒手組曲輪達引』は『助六由縁江戸桜』のパロディですので、『助六』をご存じの方は無条件で楽しめると思います。僕自身のお役は出てきただけで場を収められるような大きさを表さなくてはいけないので、ちょっと大変ですね。亀治郎さんが助六をなさるのですが、アドリブを出されたらどうしよう(笑)。僕たちは「新春浅草歌舞伎」などでご一緒することが多く、楽屋も同じなので、いつも楽しくやらせていただいています。楽屋での会話のノリで、アドリブを出されたらちゃんと受けないといけませんね。
 今回の「新春浅草歌舞伎」はいい出し物ばかりですよね。どれも「日本の心」があって、楽しめると思います。浅草で初芝居をご覧いただき、お正月気分をさらに高めていだたけたら嬉しいですね。

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