歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



猿之助四十八撰の内『黒手組曲輪達引』花川戸助六 (平成23年1月浅草公会堂) 撮影:松竹株式会社
 
猿之助四十八撰の内『加賀見山再岩藤』岩藤の霊 (平成22年3月京都四條南座) 撮影:松竹株式会社
 
猿之助四十八撰の内『金幣猿島郡』如月尼娘清 姫(平成22年2月博多座) 撮影:松竹株式会社
公演詳細
演目と配役
みどころ
 

澤瀉屋の芸を受け継いでいく

 「二月花形歌舞伎」では、市川染五郎さんと共に『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり) お染の七役』『女殺油地獄』に出演されます。『於染久松色読販』では油屋娘お染はじめ土手のお六、丁稚久松、奥女中竹川、許嫁お光、後家貞昌、芸者小糸を早替りで演じ分けますね。

 これまで僕は伯父の猿之助が七役を演じた時に2度、玉三郎さんと福助さんがなさった時に1度ずつ出演しています。特に伯父が演じるときは女猿曳きを勤め、澤瀉屋のやり方をそばで観ながら、「いつか自分が七役を演じる日が来るだろう」と思っていました。今回も伯父の指導を受けますが、七役は初めてですので、とにかく伯父のやり方をきちっとやることを心がけたいと思います。
 伯父は稽古では最初のうちはあまり細かいことは言わず、完成品を見てから言う人なんです。まずは「台本のどこがいらないか」から始まりますので、僕もしっかり台本を読んでいき、自分の意見と伯父の意見をぶつけあいながら作っていきます。

 七役を演じ分けますが、今回はよく歌舞伎がかかる劇場ではなく、ルテアトル銀座となりました。

 花道もすっぽんもない劇場ですが、花道を作っていただけるそうです。ただすっぽんまで作るのは無理でしょうから、これまですっぽんを使ってやってきた早替りをどうするかですね。これから知恵を出し合います。裏方さんたちとのチームワークがいいので、その点は心強いです。また、1月には玉三郎さんがこの劇場で本格的な歌舞伎を初めて上演され、ある程度の方向性をつけてくださると思います。いろいろと情報をいただきながら、考えていきたいと思っています。

 『於染久松色読販』は猿之助さんが選定された「猿之助四十八撰」のひとつです。以前猿之助さんが、「この中のこれとこれをやるとよい」と亀治郎さんにおっしゃったとうかがいました。どんなお役を勧められたのでしょうか。

 『黒手組曲輪達引(くろてぐみくるわのたてひき)』(『黒手組助六』)、『慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)』(『伊達の十役』)、『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』、『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ) 骨寄せの岩藤』、『金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)』などでした。これはお客様の人気が高く、伯父にとって自信のある演目だからだと思います。また、まだ手を加えたいと考えているものもあるようです。

 たとえば『小笠原諸礼忠孝(おがさわらしょれいのおくのて)』(『小笠原騒動』)、『君臣船浪宇和嶋(きみはふねなみのうわじま)』(『宇和島騒動』)は、もっと高めて、受け継いでほしいというような…。ほかの方々が演じられ、伯父が指導することもありますが、僕は澤瀉屋のやり方を受け継いで、これからも勤めていきます。

 七役の演じ分けが大変ですね。

 といっても作り込むのは「土手のお六」ぐらいで、あとは早替りをどううまくやっていくかですね。しどころがあるのはお六です。油屋でのゆすりの場面などおもしろく工夫できますから、そういう方が役者はやりやすい。むしろ出てきただけでその役らしく、というのが大変。お六は褒めていただけそうですけれど、お染、お光、芸者小糸あたりはむずかしそうですね。

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