歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 
『女殺油地獄』 河内屋与兵衛(平成23年2月 ル テアトル銀座) 撮影:松竹株式会社

芝居小屋の雰囲気を活かした「趣向のお芝居」をめざしたい。

 平成17年以来、ひさびさの出演となる「四国こんぴら歌舞伎大芝居」では珍しい「鯉つかみ」を勤められます。前回の上演は昭和51年岐阜相生座で、市川猿之助さんが主演でした。

 今回はだいぶ前に河内屋さん(三世實川延若)が演じられた時の台本をもとにいたします。これは趣向のお芝居だと思いますので、とにかくお客様に楽しんでいただけるように工夫を凝らしたい。僕は滝窓志賀之助と鯉の精の二役。河内屋さんが演じられた時は本水を使っていますが、金丸座(※)は国の重要文化財ですからたくさんの水は使えません。また僕は、今回は本水がないほうがよいと思っているんです。本水なしで楽しめるような宙乗りとか、鯉との格闘場面など、打ち合わせしながら、今考えているところです。金丸座はすべてがアナログで動いていますから、それをうまく使った仕掛けをすることも必要ですね。客席とも近いですし、舞台からお客様の中に降りていくような趣向も考えたいと思っていますので、期待なさってください。

 「四国こんぴら歌舞伎大芝居」には、東京はじめ全国から歌舞伎ファンが集まります。

 そうですね。よく芝居をご覧になっている方が多いのですが、不思議なことに金丸座にいらっしゃるとあの小屋ならではの見方になる。それも金丸座が持つ力だと思います。歌舞伎座に比べれば随分と小さいからやりづらくてもおかしくないはずなのに、特に芝居のやり方を変える必要がなく、「ああ、やはり歌舞伎専用に作られた芝居小屋なのだ」と感じます。
 雰囲気も独特です。楽屋は舞台のすぐうしろにありますので、演じている声が生で聴こえてきますし、障子一枚隔てて雨風の音も伝わってきます。とても風情があっていいですね。

 2月にはル テアトル銀座で『女殺油地獄』を通しで演じられ、3月は新橋演舞場で『浮舟』を、4月には金丸座で『鯉つかみ』をと、新たに練り上げていく舞台が増えています。大変ですね。お疲れになりませんか。

 大変は大変です。でも古典歌舞伎をやらせていただくときも別の意味で大変。楽なものはないですね(笑)。初めてやるものは一から作っていくので大変だけれど、二度目三度目でも何か新しいことを加えたいと思ってしまいますので。

※「金丸座」は愛称で、正式名称は旧金毘羅大芝居
第二十七回四国こんぴら歌舞伎大芝居
公演詳細
演目と配役
みどころ

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