歌舞伎いろは

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浅草公会堂 「新春浅草歌舞伎」前編 中村歌昇――『仮名手本忠臣蔵』不破数右衛門ほか

ようこそ浅草へ 前編

思ってもいなかった不破数右衛門

 ――歌昇さんは『仮名手本忠臣蔵』では「六段目」の不破数右衛門を初役でなさいます。

 正直なところ、「五段目・六段目」で不破をこの年でやらせていただけるとは考えてもいませんでした。千崎が先かなと思っておりました。「六段目」の不破は、浪士の頭目である大星由良之助の代わりになるような役です。由良之助に信頼されているからこそ、不破の考えで勘平を連判に加えることもできる。不破に重厚さがないと芝居が軽くなる気がします。今までに演じたことのないジャンルの役です。

 与市兵衛の家に勘平を訪ねた不破は、勘平の母おかやの言葉もあって、最初のうちは与市兵衛を殺したのが勘平だと思い、詰問します。ですが、与市兵衛の死骸を改め、鉄砲で撃たれたのではなく、刀で斬られていると気づきます。勘平は義父の与市兵衛を殺害した定九郎を撃ち殺して仇を取ったことになる。そこで「でかした」となる。その切り替えが大事だと思います。

 ――若手の俳優が勤められることは少ない役ですね。

 不破の行動をお客様に納得してもらわないといけない。そこが本当に難しいだろうと思います。不破が軽いと芝居の全体がだめになってしまいます。血気盛んな若侍である千崎との対比が、うまく出せるように注意いたします。

 鬘も床山さんに頼んで、いろいろ工夫をしてもらいます。平成25年に伝統歌舞伎保存会の研修発表会(12月国立劇場)で「七段目」の由良之助を勉強させていただきました。そのときの鬘を、不破っぽくつくってもらう。そういう工夫はしますが、顔が若く見えてしまうのは仕方がないだろうなと思います。勘平のほうが不破より年上に見えないように、諸先輩にいろいろうかがって勤めたいです。

やりたい役はたくさん

 ――これまでに「七段目(祇園一力茶屋)」と「十一段目(討入り)」には出演されていますが、「五段目・六段目」は初めてとうかがいました。

 「四段目(判官切腹)」にも出たことがありません。「七段目」の三人侍と「十一段目」の立廻りには出していただきました。今回の「五段目・六段目」も含め、通し上演をしたら夜の部に出る役ばかりですね。『忠臣蔵』には演じたい役がいろいろあります。由良之助、千崎、定九郎、勘平…。桃井若狭之助も演じたいです。

 ――第2部の最後では『俄獅子』の鳶頭で出演されます。

 重厚な「五段目・六段目」の後は、お正月ですし、『猩々』と『俄獅子』で、お客様に、華やかな雰囲気でお帰りいただければと思います。一所懸命に踊らせていただきます。

 浅草は3回目。過去2回はお兄さん方に引っ張っていただき、自分のことだけに集中していました。今回は僕らが頑張らなければなりません。若手の登竜門の浅草歌舞伎に出演できるのはうれしいですが、責任も感じています。

歌昇、この一年の舞台

平成25年

12月 「平成25年12月歌舞伎公演」(国立劇場)
『主税と右衛門七』矢頭右衛門七/『忠臣蔵形容画合』「大序」桃井若狭之助安近/「二段目」奴桃平/「六段目」めっぽう弥八
12月 第十二回伝統歌舞伎保存会研修発表会」(国立劇場)
『仮名手本忠臣蔵』「七段目 祇園一力茶屋」大星由良之助

平成26年

1月 壽初春大歌舞伎」(歌舞伎座)
『松浦の太鼓』鵜飼左司馬
1月 新春浅草歌舞伎」(浅草公会堂)
『石橋』獅子の精
2月 二月花形歌舞伎」(歌舞伎座)
『心謎解色糸』赤城左京之助光若/『青砥稿花紅彩画』青砥家臣伊皿子七郎
3月 鳳凰祭三月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『壽曽我対面』八幡三郎/『盲長屋梅加賀鳶』磐石石松
4月 第三十回記念 四国こんぴら歌舞伎大芝居」<旧金毘羅大芝居(金丸座)>
『菅原伝授手習鑑』「車引」舎人梅王丸/『女殺油地獄』小栗八弥
5月 明治座 五月花形歌舞伎」(明治座)
『義経千本桜』「鳥居前」佐藤忠信実は源九郎狐/『邯鄲枕物語』米屋勘助・蕎麦屋與四郎
6月 六月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『春霞歌舞伎草紙』若衆
6-7月 「松竹大歌舞伎」東コース
『双蝶々曲輪日記』「角力場」放駒長吉/「口上」
9月 秀山祭九月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『鬼一法眼三略巻』「菊畑」笠原湛海/『絵本太功記』「尼ヶ崎閑居の場」真柴郎党
10月 第41回NHK古典芸能鑑賞会」(NHKホール)
『傾城反魂香』「土佐将監閑居の場」土佐修理之助
11月 吉例顔見世大歌舞伎」(歌舞伎座)
『寿式三番叟』千歳/『井伊大老』薩摩浪士 有村次左衛門
12月 平成26年12月歌舞伎公演「通し狂言 伊賀越道中双六」(国立劇場)
『伊賀越道中双六』捕手頭稲垣半七郎

撮影:永石 勝

中村歌昇さんをもっと知りたい!

四代目 中村歌昇
(なかむら かしょう)

生まれ 平成元年5月6日、東京都生まれ。
家族 三代目中村又五郎の長男。初代中村種之助は弟、五代目中村米吉はいとこにあたる。
初舞台 平成6年6月歌舞伎座『道行旅路の嫁入』旅の若者で四代目中村種太郎を名のり初舞台。
襲名 平成23年9月新橋演舞場『菅原伝授手習鑑』「車引」舎人杉王丸、「寺子屋」涎くり与太郎、『舌出三番叟』千歳、『勢獅子』鳶頭雄吉ほかで四代目中村歌昇を襲名。

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