【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
- 尾上松也
- 坂東巳之助
- 中村壱太郎
- 中村隼人
――来年は第1部、第2部で5演目の「新春浅草歌舞伎」。順を追ってお話をうかがいます。第1部幕開きの『傾城反魂香』は、巳之助さんにとって浅草の原点だとおっしゃいました。
巳之助:初めての「新春浅草歌舞伎」出演が平成20(2008)年でした。その最初の演目が『傾城反魂香』で、修理之助をさせていただきました。自分にとっての浅草の原点であることはもちろん、それまでほとんど芝居に出ていませんでしたので、歌舞伎俳優としての第一歩がこの芝居だったと思っています。又平は勘九郎さんに教わります。
壱太郎:おとくは以前から憧れのお役の一つでしたが、父が昨年、大阪の襲名披露公演で又平を演じたとき、それまでとは違う感銘を受けました。修理之助として近くで拝見していたこともあったのかもしれませんが、猿之助のお兄さんが演じられるおとくの愛情深さに、芝居の中に飲み込まれていくようでした。それに少しでも近づけたらと、猿之助のお兄さんにお習いします。
隼 人:僕は雅楽之助を勤めさせていただきます。修理之助は2度、させていただいたことがありますが、雅楽之助は初めて。染五郎のお兄さんに教えていただきます。
――『吉野山』は、松也さんの佐藤忠信実は源九郎狐、壱太郎さんの静御前。そして早見藤太は巳之助さんです。松也さんは前回の浅草で『四の切』の狐忠信をなさっています。
松 也:今回も菊五郎のお兄様に見ていただきます。物語のところが僕は好きなのですが、初心者の方には馴染みにくさもあるかもしれません。ただ、身体の表現が語りとマッチしていれば、おのずと楽しんでいただけるものになると信じています。とにかくかっこいい。僕はそこが一番好きなのですが、役をきちんととらえて、たどりつければと思います。
壱太郎:静御前は永楽館でさせていただいたことがあります(平成22年11月)。印象深いのは南座で『義経千本桜』の通しがあった際(同年9月)、玉三郎のおじ様が「吉野山」と「四の切」の静御前をなさって、僕は「鳥居前」と「蔵王堂」の静御前だったのですが、玉三郎のおじ様が衣裳の着方など、さまざま教えてくださったんです。当時は掛けを着るような役はほとんど経験がありませんでしたから、女方の基本の細かな部分を教えていただいたと印象深く覚えています。
松 也:静御前は実は女武者なんですよね。そこをついつい忘れがちになるのだけれど、四天にそう言われてああ、そうだったと。
壱太郎:そうなんですよ。でも『吉野山』では見せづらい部分で…。
松 也:長刀持って登場しますか(笑)?
壱太郎:それはダメです(笑)
巳之助:それように四天、用意してもらったら、どうですか(笑)。藤太は、忠信と静御前がそれまでつくり上げてきた空気感をパッと変えて幕を閉める役だと思っています。第1部の終わりでもありますし、お客様に、明るい気分で浅草の街に出ていっていただけるようにしたいですね。
壱太郎:今、お話を聞いていたら『吉野山』はとても起承転結がはっきりしている踊りだとわかった気がします。静御前の登場で“起”こし、鼓で忠信が出て来て、その忠信の物語で“転”じ、立廻りで終わる。
松 也:本当だ、やっぱりよくできていますよ。
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ようこそ浅草へ
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ようこそ浅草へ――後編
自分たちが新しい浅草歌舞伎の幕を開ける! 熱意を舞台にぶつけ、一人でも多くのお客様に楽しんでいただきたいと奮闘する三人が、演じる役のことを語る後編です。