『籠釣瓶花街酔醒』

道中の八ツ橋―『籠釣瓶花街酔醒』

 『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』に登場する傾城(けいせい)・八ツ橋が花魁道中をする際の鬘(かつら)です。傾城の髪というと大きな髷(まげ)がすぐに思い浮かびますが、これは髷をさばいた洗髪(あらいがみ)の形です。鹿の子絞りの布は、藤、緋(ひ:赤)、鴇(とき:淡紅)、浅葱(あさぎ:薄青)の4色。柄には決まりがあって、歌舞伎では麻の葉模様しか用いません。髪に飾る鹿の子絞りは軽くする必要があるため、着物の絞りとはまた異なる難しさがあるとか。京都でも絞りの職人は減っているため、大変な貴重品とのことです。

文・田村民子 / 写真・小澤義人 / 協力・有限会社光峯床山