歌舞伎いろは

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「白浪物」の盗賊ヒーローたち

女装や刺青も華やかな歌舞伎の泥棒、大目立ち。

「白浪物」の盗賊ヒーローたち

 弁天小僧菊之助の「知らざあ言って聞かせやしょう」、日本駄右衛門の「問われて名乗るもおこがましいが」、お嬢吉三の「こいつぁ春から縁起がええわぇ」。盗賊を主人公とする「白浪物(しらなみもの)」と呼ばれる演目には、小気味よく、印象的な名台詞があります。台詞の主は知らなくても、誰でも聞いた覚えがある有名な台詞でしょう。そして、盗賊の中でも一番の有名人は何と言っても鼠小僧です。テレビや映画、そして芥川龍之介も「鼠小僧次郎吉」という小説を書いているので、鼠小僧は、歌舞伎に縁がない人でも知っている盗賊のヒーローです。

 鼠小僧を主人公とした歌舞伎の本名題「鼠小紋東君新形(ねずみこもんはるのしんがた)」の初演は江戸の末期1857年(安政4年)、作者は河竹黙阿弥です。黙阿弥は幕末から明治時代まで活躍し、「白浪作家」と呼ばれるほど白浪物の名作を残しています。先に挙げた3つの名台詞は、黙阿弥が書いた「白浪五人男」、「三人吉三」に出てきます。