歌舞伎いろは

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自由に夜歩きはできなかった江戸の町

商家の瓦屋根と長屋の板屋根。屋根の海原が広がる江戸の町並み。

自由に夜歩きはできなかった江戸の町

 歌舞伎の世界では盗賊ヒーローが活躍していますが、実際の江戸の町も、彼ら盗賊があちこちで暗躍するような物騒なところだったのでしょうか。

 江戸は、町ごとに木戸で区切られ、自治機関で自警団として、木戸番屋・自身番屋が置かれていました。自身番屋は時代劇の中でよく見る、岡っ引がいるあの「番屋」です。木戸番屋には町内が雇った木戸番が住み込みで詰め、門は夜十時から朝6時まで閉鎖されていました。通行する者がいる場合は、門の左右の潜戸から通行させ、その際には拍子木を打って、次の木戸に通行人が向かうことを知らせました。江戸の町では身元の知れた者でない限り、夜歩きはできなかったのです。

 鼠小僧と言えば、ヒョイッ、ヒョイッと屋根伝いに移動して、鼠のように天井裏から侵入し、盗みをはたらき、逃げおおせる、というのが定番です。次郎吉が身軽な鳶人足だったこともありますが、地上を走るシーンよりもそんなシーンが多いのは、木戸番の制度があったからかもしれません。