歌舞伎いろは

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大ヒットした「野田版鼠小僧」

粋な頬かむりとアートな柄の衣裳がぴったりマッチの鼠小僧。
「野田版鼠小僧」の衣裳に使われている波のような柄は、屋根の瓦をイメージしたもの。

大ヒットした「野田版鼠小僧」

 鼠小僧次郎吉は実在の人物で、1832年(天保3年)に磔・獄門になっています。実は、次郎吉より50年ほど前に、稲葉小僧という「義賊」の先輩がいました。次郎吉は盗んだお金はほとんど酒食と博打に使ってしまったという記録が残っており、実際は義賊ではなかったという話しは有名ですが、稲葉小僧は武家屋敷を中心に狙い、実際に貧しい人々に施しを与えていたようです。同じように武家屋敷しか狙わず、人を傷つけることがなかった次郎吉と、稲葉小僧の「義賊」というキャラクターを混ぜ合わせた実録本「鼠小僧実記」が出版されると、次郎吉も江戸の庶民からヒーロー扱いされました。そして、実録本と同じように稲葉小僧と次郎吉が混ぜ合わさった「鼠小僧」が主人公の「鼠小紋東君新形」は当時大当たりをしたようです。現在では、2003年夏の野田秀樹作・演出による「野田版鼠小僧」の方が強く印象に残っている方が多いでしょう。この作品は大変な評判を得て、大ヒットしました。

 「野田版鼠小僧」は「鼠小紋東君新形」とはまったくストーリーや趣が異なり、主人公も次郎吉ではなく三太。中村勘三郎(当時・勘九郎)が、義賊ではなくケチでドジな「鼠小僧」の三太を熱演しました。駄洒落やギャグも満載で、躍動的で賑やかな舞台の様子はシネマ歌舞伎、DVDでも見ることができます。