歌舞伎いろは

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偽物と見破られた天一坊は、お殿様など典型的なVIPのスタイル
 

歌舞伎で「大岡政談」と言えば「天一坊」

 歌舞伎で「大岡政談」と言えば、「天一坊大岡政談」でしょう。河竹黙阿弥が講談※から脚色したもので、初演は1875年(明治8年)でした。
  天一坊事件は実際にあったできごとで、天一坊と名乗る紀州生まれの山伏が将軍吉宗のご落胤を騙り、みだりに浪人を集めたとして、捕らえられた事件がもとになっています。
 演目の中に、大岡越前守と天一坊の参謀である山内伊賀之亮が対決する「綱代問答」や、越前守が妻子とともに白装束になり、切腹をしようとする見せ場があり、最近では、2001年6月公演で天一坊・池田大助を菊五郎、山内伊賀之亮を仁左衛門、大岡越前守を團十郎が演じました。

  実は、「天一坊事件」は大岡忠相が「お裁き」をしたものではなく、関東郡代・伊奈半左衛門という役人が取り調べた事件でした。大きな事件だったので、講釈師が物語をより盛り上げるために、この事件を「大岡政談」として創作したのが発端のようです。

 実際に忠相が裁いた事件で有名なのは、「髪結新三」の基になっている「白子屋事件」です。主犯のお熊をはじめ女性3人が死罪となった実際の裁きとは異なり、「髪結新三」で描かれているお熊たちは被害者として描かれています。「髪結新三」の本名題は「梅雨小袖昔八丈」、今年10月に歌舞伎座で上演され、幸四郎が小悪党、髪結新三に初めて挑んでいます。
※江戸時代の「講釈」「辻講釈」は明治以降、「講談」と言われるようになりました。