歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



       
加賀鳶・勢ぞろい
「加賀鳶・勢ぞろい」
髷はまさかりの形、半纏の襟は白いなめし皮という、粋で豪勢な姿。 裾をはしょった喧嘩のスタイル。
 

江戸庶民の揉め事の仲裁もした町火消し

「火消し」と言えば、「め組」「加賀鳶」を連想する歌舞伎ファンが多いでしょう。本名題「神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)」に出てくる「め組」は町火消し、本名題「盲長屋梅加賀鳶」に出てくる「加賀鳶」は大名火消しです。江戸の火消しは大きく分けて、江戸城や重要施設の防火・消火にあたった大名抱えの「大名火消し」、幕府抱えの「定(じょう)火消し」、町抱えの「町火消し」の3グループがありました。

 町火消しは、町奉行方の与力、同心が指揮を執りますが、経費は町の負担で、発足当初は店借人や奉公人などが駆り出されました。当時の消火活動は燃えている家を潰したり、風下の家を引き倒したりして延焼を防ぐことであったので、所詮素人である彼らに務まるはずはなく、やがて建築、土木のプロで身も軽い鳶人足へと移行していきました。

 町の経費で運営されたということは旦那衆がスポンサーであったので、町火消し達は正業の鳶職の他に、商家の祝事や葬式などの下働きをしたり、店に来る騙り(かたり:詐欺師)や恐喝を追い払ったりすることもあったそうです。さらには、町内の揉め事の仲裁をしたり、岡場所のあるところでは、客の喧嘩口論の仲裁などもしたそうです。