歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



       
半鐘を鳴らすのにも厳しいルールがあり、定火消しの櫓より先に町火消しの櫓で鳴らす事は許されなかった。
 

悪党をやりこめる、粋でいなせな火消しの鳶頭

 「め組の喧嘩」は火消しと力士の喧嘩が題材ですが、「盲長屋梅加賀鳶」は大名火消しである加賀鳶が以前から揉め事が絶えない定火消しのところへ、喧嘩支度で今にも木戸を破って行こうとする場面から始まります。「火事と喧嘩は江戸の華」というように、火消しに喧嘩はつきもののようです。

 また、1799年(寛政11年)には、黄表紙(風刺を織り交ぜた読み物)の内容に怒った火消し達が、板元宅と作者の式亭三馬宅を打ち壊して、4、50人が自首、入牢するという事件も起きています。彼らは気が荒いだけでなく、危険をともにして働いていたからか仲間意識が強く、すぐに結束して血気にはやった行動に出ていたようです。

 「盲長屋梅加賀鳶」でも、鳶の衆が粋な火事場装束を着て勢ぞろいする場面が豪華で見ものですが、ストーリーとしては按摩で悪党の道玄が主役で、コミカルな笑わせる場面が多い演目です。大店に言いがかりをつけて金を巻き上げようとする道玄を、鮮やかな「裁き」でやりこめる鳶頭の松蔵の、粋な江戸っ子ぶりが印象的です。松蔵は町火消しではなく大名火消しですが、揉め事を収拾するために大店から呼ばれたところを見ると、喧嘩っ早いけれども腕っ節が強くきっぷもいい火消し達は、総じて町人達から頼りにされる存在だったのでしょう。