歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



縫い針をリズミカルに動かし休みなく縫い進める

着付けは俳優のサポート役

 俳優は楽屋入りすると、まず頭に羽二重を巻き、自身で化粧に入る。化粧がすむと、次に衣裳の着付け、そして最後に床山が鬘をかけ、舞台へと向う。そこで続いて見せていただいたのは、白塗りも美しい女方、『御所五郎蔵』の新造の着付け。立役でも、女方でもサポートの仕方は基本的に変わらない。

 「今回の例では登場しませんが、立役の着付けでポイントになるのは、裃の引き具合。一方、女方の場合は、背面からの襟合わせと、帯の締め具合です。歌舞伎の場合、作り帯も珍しくないんですが、胴の部分の締め具合は、人によってさまざま。役者さんと呼吸を合わせて着付けていくことが大切だと思います」

 タイトな出演時間、楽屋での着付けに長い時間はかけられない。前面はお弟子さん、背面は衣裳担当者と、双方がリズミカルに〈呼吸を合わせ〉ながら、動きやすく、そして着崩れることなく美しい姿を作りあげていく。それぞれの手元に無駄な動きは一切ない。

 「舞台が終わると、役者さんたちが楽屋で脱いだ衣裳を回収し、歌舞伎座楽屋の1階と2階にある衣裳部屋に運びます。そこで、化粧などがついていたら落とし、スチーム・アイロンをかけ、たたんで、翌日まで保管するんです。この衣裳の手入れもわれわれの大事な仕事。そしてまた翌日、各々の楽屋に持っていくんです」


『御所五郎蔵』の新造役の着付けを中村京三郎さんに見せていただいた。襟の具合などを鏡で確認しながらのスピーディーな着付け。