歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



扇づくりの難所は、「折り」

「切り回し」と呼ばれる工程。細い糸のこで、複雑な図案を切り抜いていく。

 かんざしを手にとり間近で眺めると、目を凝らさなければ見えないほどの細工が施されていることに驚きます。かんざしは、見せるためのアクセサリーですが、持ち主自身がうっとり眺め、至福に浸るためのアイテムでもあるのでしょう。

 この精緻なかんざしは、どうやって作られているのでしょうか。三浦さんの作業場を見せていただきました。

 「歌舞伎のかんざしは、加工しやすく丈夫な真鍮(しんちゅう)という金属を使います。まず紙に下絵を描き、それを金属の板に貼り付けます。その図案を糸のこで切り抜き、<たがね>という彫刻刀のような道具を使って彫りを入れていくのですが、ちょっとした加減で表情が全然違ってしまいますね。まだまだ、研鑽しなければならない工程のひとつです。

 こうした細工の技術を高めることは、もちろん必要ですが、かんざしの大きさに対する図案の繊細さなど、全体のバランスをいかによくするかをもっと研究しなければならないと思っています。このあたりは、センスや感性にかかわってくるところなので、尾形光琳など先人の優れた芸術品にたくさん触れるようにして、磨いていきたいと思っています」

金属板を包みこんでいる黒い土台は、松やに。金属を傷めず、しっかり固定してくれる優れもの。

「たがね」という道具を小さな金槌でたたき、彫金をほどこす。「たがね」は、三浦さんのお手製。

びらびらかんざしの仕上げ。メッキ作業以外は、全て三浦さん1人で制作する。

歌舞伎の逸品

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