【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
かんざしを持つ、よろこび
ぎっしり積まれた巻見本(まきみほん)。一反すべてが同じ柄でなく、30~40センチごとにいろいろな柄が染めてある。広げて見始めると時間がいくらあっても足りない。
色あせた衣裳を染め直す。着物をいったんほどき、1枚の反物のように縫い合わせて染め直し、こうして裏側に伸子(しんし)と呼ばれる棒をつけ、糊をひいて乾かす。
糊をひくための道具。今は、化学糊を使っているところが多いが、こちらでは昔ながらの「ふのり」を用いている。やはりこれが一番だとか。
歌舞伎の舞台を、衣裳を通して見続けてきた小堺さん。後継者の育成に力を入れながら、今あらためて想うのは、もっと一般の人に着物を着てもらいたいということだそうです。
「歌舞伎はね、舞台も豪華で輝いているし、客席も和服で華やいでいるでしょ。それがいいんですよ。観劇の着物は、すごい訪問着じゃなくていいと思うんです。無地にちょっとぼかしが入ったものとか、さりげなく着やすいものがいいんじゃないでしょうかね。
着物を脱いだ後ですが、汗がついていると変色したり輪ジミになってしまうので、できればすぐに生洗い(いけあらい)※に出してほしいですね。それから、うっかりお醤油を付けてしまったりしたときは、押さえる程度であわてて拭かないこと。すれると厄介ですから、なるべく早く持ってきてほしいですね」
小堺さんのお店では、一般の方も着物をつくることができますが、普通の呉服屋さんとは異なり、反物がずらっと揃っているわけではありません。歌舞伎の衣裳と同じように、一からオーダーメイドで注文をします。歌舞伎の衣裳のお話などをうかがいながら、好みの着物に想いを巡らせる。きっと、至福の時間となるでしょう。
生洗い(※)着物をほどかず着物の形のままで汚れを落とすこと。ちなみに「洗い張り」は、着物をほどいて反物の状態に戻し、水洗いすることで、終わったあとは仕立てる必要がある。
*新しく着物をつくる、お手持ちの着物を染め替えたり刺繍を加える、生洗い、洗い張りなど、なんでも対応できる希有な着物の専門店。2009年10月に新店舗がオープン予定。 |
歌舞伎の逸品
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