歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



はき心地は、鼻緒のすげ方で決まる

鼻緒をすげる手順。まずは鼻緒止めと呼ばれる作業からはじめる。紐の結び方はいろいろあるようで、習った親方のやり方を受け継ぐそうだ。



那須達雄さん。にこにこと説明しながら鮮やかな手つきで鼻緒をすげていく。その時間、片足分でおよそ5分。

 田中さんの店は郊外に製造部をもっており、職人さんたちが歌舞伎の履物や特注品を製作しています。そして、この花川戸には鼻緒をすげる認定技能士・那須達雄さんがいらっしゃいます。そう、こちらでは好みの台と鼻緒を選んで、自分の足に合わせてすげてもらうことができるのです。その作業を拝見しながら、お話をうかがいました。

 「下駄や草履は、足が痛くなるもの。と思っている方が多いようですが、それは間違い。鼻緒をすげる職人がいる店でお求めになれば、足が痛くなることなんてないんですよ。

 まずは、鼻緒選びが大事です。足が痛くなるのが心配な方は、幅が太めで裏に本天(ほんてん)というコーデュロィのような布がついた鼻緒を選ぶと、肌へのあたりがソフトですよ。そして鼻緒をすげる過程でお客様にはいていただいて、前つぼと2つの後穴(あとあな)で鼻緒の締め具合を調整します。こうして足に合わせて鼻緒をすげると、はき心地がとてもいいですし、履物の持ちもよくなるんですよ」


 かつて鼻緒をすげる作業は、身近なものだったのですね。そういえば歌舞伎のお話のなかでも、鼻緒が切れるシーンがよくあります。靴が壊れたのでは様になりませんが、こよりを作って鼻緒を直すしぐさは独特の風情があります。

歌舞伎の逸品

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