歌舞伎いろは

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手業の音が響く仕事場

棹を専門につくる職人の清水善一さん。もう半世紀以上も棹を作っている。「ある程度修業すれば、形は作れるようになります。でも木のクセや狂いを見極められるようになるには、かなり時間がかかりますね」

敏雄さんの次男の堀込泰成さん。皮を張る作業をしているところ。「1枚の皮のなかにも、強いところと弱いところがあります。注意して張っていかないと、すぐに破れてしまいます」

 お仕事場には、さまざまな材料や道具が所狭しと置かれていますが、そのほとんどは木。そのせいでしょうか、厳しい仕事場のはずなのに、どこか暖かみが感じられます。木を削る音や槌を叩く音などが小気味よく響く中、敏雄さんに三味線の素材について教えてもらいました。

 「三味線の棹に用いる木材にはランクがあって、いいものから言うと紅木(こうき)、紫檀(したん)、花梨(かりん)となります。皮の張ってある胴と呼ばれる部分は、花梨。この胴の内側は、音の反響をよくするために綾杉彫り(あやすぎぼり)という彫りがほどこしてあります。機械でもできるのですが、比べるとやっぱり手彫りは味があるでしょ。<*2つの胴を出して、見せてくださる>でも、これを彫れる職人さんはたった1人になってしまいました。だから、この手彫りの胴は大事に手元に置いているんですよ。

 三味線の皮は、いろんな事情があって入手しにくくなってきましたね。次の世代が困らないように、新しい皮をみつけよう!と大学の先生たちといろいろ研究もしました。人工革も試行錯誤したんですが、結局だめでしたね。随分時間がかかりましたが、なんとかものになりそうなのがカンガルーの皮です。いろいろ大変なことも多いんですが、お客さんに喜んでもらうと嬉しくってね。ただそれだけのためにやっているんですよ。私たちが受け継いできた精緻な技術を途絶えさせないように、できる限りの努力をしていきたいと思っています」

丹精に手で掘られた「綾杉彫り」。皮を張れば、見えなくなってしまう。相当の集中力がないと、このように美しくは彫れないそうだ。

ある程度まで形になった象牙のバチを仕入れて、使う人に合わせてヤスリで削って仕上げる。こうしたバチの仕上げや調整までできる三味線屋はあまりないそうだ。

糊も自家製。皮を張り替える際に、木を削らなくてもすむよう天然素材を使うそう。

歌舞伎の逸品

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