歌舞伎いろは

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ピンセットが生む、布の花びら

かんざし作りに必要なパーツは、ほとんどが青木さんの手作り。短冊状の小さな金属は「びら」と呼ばれるが、こちらだけは専門の「びら屋」さんに外注する。

青木さんのお仕事場は、東京の荒川区にある。隣は小さな公園で、細い路地が入り組んだ風情ある下町。ご自宅の2階にあるお仕事場は、日当たり抜群。

 つまみかんざしは、布でできた1片の花びらが基本の構成単位。それが例えば5片集まって1輪の花になり、さらにその花が連なって大きな「前ざし」になる。あるいは花びらが球体を覆い尽くして「くす玉」となっていきます。

 その花びらは、一体どうやって作られているのでしょう。青木さんが取り出して見せてくださった材料は、正方形の小さな布。「これが、どうやったら丸くてふんわりした花びらになるのですか?!」

 「ではやってみましょうね。まずこの木の板の上に糊をたっぷり出します。そしてピンセットと指で折って…(あっと言う間)、ほら花びらになったでしょ(取材陣、食い入るように見つめるが追いつくことができない)。え、速かったですか。では、撮影用にもう一度ゆっくりやりましょうね。

 花びらの外側に白い縁のついたものは、2枚重ねてやるんですよ。内側になる布(色付き)は、固い張りのある布、外側(白)はそれより柔らかい布にしておきます。こうした2重の花びらの場合は、糊も固めにしておかないと布が跳ねて崩れてしまいます。

 うちのような仕事は、じっと正座をしていられる人じゃないとできません。正座をしていないと本当の力が入らないんですよ。床山さんもみなさん正座をして仕事をされていますが、それも同じ理由だと思いますよ」

糊の固さは気温や湿度、布の固さなどによって微妙に調整している。

布地は色を指定して染めに出し、ストックしている。

つまむ作業は布地がやわからいものほど、高い技術が必要になってくるそうだ。

赤い色は、上方と江戸では微妙に異なる。上方はややくすんだ赤を好むとか。

歌舞伎の逸品

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