歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



口紅は、年齢によって描き分ける

歌舞伎の白塗りを体験。まずは下地の歌舞伎油を顔の表面がパツパツになるほど、しっかり塗り込む。ほのかな白粉の香り。そして刷毛に含まれた白粉のぬるりとしたなんとも言えない感触。非日常的な不思議な感覚。

 女方の化粧は、とても繊細に表現されているため、衣裳や髪型に比べて役柄による差異を見分けるのは難しそうです。「此本さん、わかりやすい例をいくつか教えていただけますか」。

 「では、まず口紅に注目してみましょうね。口紅は、上唇の厚さ(縦の幅)が薄いほど、年齢が若いとされています。例えば下唇の厚さを2とすると、上唇が1くらいだと娘。それが1.5くらいに厚くなると大人の女性といった感じでしょうか。口紅の色は、俳優さんがそれぞれご自分の好みに合わせて調合されているようです。

 眉は、私たちは<まみえ>と発音していますが、一般の化粧と違うところは、眉山をつくらないところです。女方さんのお顔を思い出していただけるとわかると思いますが、すーっとまっすぐ。笹眉とか三日月眉とか言ったりします。これが強い立役になると、山をくっきり作ります。

 それから、最も一般のお化粧と異なるのが目元にいれる赤い<目はり>でしょうね。目の位置は人によって顔全体に対する高さが違っていますが、目の位置が高いと大人っぽく、低いと幼く見えるんです。ですから、かわいらしい印象の顔を作りたいときは、目の下側の目はりをたっぷり入れて、目の位置を低くみせます。また、目はりを大きく入れると華やかに、控えめにするとおしとやかに見えます。このように、化粧によって年齢や性格を変えて見せることができるんですよ」

此本さんが手際よく白粉をひくと、あっという間に真っ白な顔に。とにかく一息に塗るのがコツだそうだ。

目はりを入れる。日本化粧ならではの独特の美意識。

白粉で唇の形が消されているので、口紅を自由自在に描ける。上唇の山は、あまりとがらせず、やや外側の位置にもってくるのがポイント。

歌舞伎の逸品

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