歌舞伎いろは

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伽羅の香りを「聞く」

香道に用いるお道具。四方盆(よほうぼん)というお盆の上に、七ツ道具などが並ぶ。

沈香(じんこう)と呼ばれる香木。沈香はベトナムなどの南方諸国で数百年の間、土中に埋もれていた木。日本産のものはない。

 現代では手軽に楽しめるお香も増え、お線香のように火をつけるタイプも随分普及しています。しかしお香に直接火をつけず炭などを用いて間接的に熱を与えるほうが、お香のもつ香りそのものを純度の高い状態で感じることができるそうです。そこで、香炉を使う本格的なお香の焚き方を御指南いただきました。用いるのは、なんと伽羅(きゃら)の香木です。

 「香炉は実は2種類ございまして、香道などで手に持って使うものと、床の間などに置いてお部屋全体を香らせる空香(そらだき)用があります。香炉には正面があり、お作法でその位置が目印になる所作がありますので、わからない場合は店などで教えてもらうといいですね。

 香道では、香たどんという小さな炭を使います。これを灰のなかに入れることを、<いける>と言うんですよ。次に、灰にいけた香たどんの熱が上にぬけるように火箸を使って火窓という通路を作り、その上に銀葉(ぎんよう)という薄いガラス板のようなものをのせます。これは雲母(うんも)という鉱物でできています。

 この銀葉の上に、香木をのせるのですが3ミリ角程度の小片で充分です。馬尾蚊足(ばびぶんそく)という言葉があるのですが、昔から馬のしっぽや蚊の足くらいのわずかな香木が適量とされてきました。伽羅は時間とともに3種類くらいの香りが立ち現れてきます。とても奥深い香木です」


[手順1]
香炉の灰に香たどんをいけ、火箸を使って灰を山にしていく。

[手順2]
灰押さえという道具で、灰の形を整える。

[手順3]
羽で香炉についた灰をきれいにお掃除する。

[手順4]
火箸で、香炉の中心に火窓をつくる。

[手順5]
銀葉をのせる。小さな道具なので、思い通りの位置にのせるのが難しい。

[手順6]
銀葉の上に香木をのせる。

歌舞伎の逸品

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