一、口上（こうじょう）

　歌舞伎俳優が裃姿で観客に挨拶を述べる口上は襲名披露公演などでお馴染みですが、そのルーツは江戸時代にあります。上演に先立ち狂言や演者を紹介するなど古くから行われてきました。そのひとつが訪れた土地の方々に挨拶を述べる御目見得口上です。　　
　それをさらに発展させたのが、各地で行われてきた「坂東玉三郎特別公演」の口上と言えるでしょう。親近感の湧く語り口や内容はそれだけでも魅力的ですが、玉三郎は「お客様により楽しんでいただきたい」との思いから、打掛などの豪華な衣裳も披露するようになりました。そして玉三郎自身がその解説をします。上演中の舞台ではよく見えない部分もはっきりとわかると各地で評判です。
　口上のひと幕のためにあつらえた四季の花々を描いた屏風にも注目です。

二、鶴亀（つるかめ）

　唐の時代の宮廷における新年の儀式を題材にした能「鶴亀」を歌舞伎舞踊化した作品です。能の詞章はそのままに、長唄の三味線音楽に移し替えて上演されます。
　新春の節会に出御するため不老門に姿を現した女帝は鶴と亀を従えています。鶴と亀は女帝の長寿と治世の安泰を寿ぐ舞を舞い、やがて女帝自ら舞楽に興じます。さらに鶴と亀は唐の玄宗皇帝が夢に見たという「霓裳羽衣（げいしょううい）の曲」を舞い、女帝もまた厳かに舞い納めます。

三、日本振袖始（にほんふりそではじめ）

　日本神話で有名な素盞嗚尊（すさのおのみこと）の八岐大蛇（やまたのおろち）退治に題材を取った物語で、やはり神話に登場する岩長姫に八岐大蛇が化身したという設定となっています。
　木花開耶姫（このはなさくやひめ）の姉である岩長姫は妹とは対照的に醜く、それゆえに美女を妬む悪女として描かれます。
　出雲の国の簸の川には八岐大蛇が棲みつき、美女を生贄として差し出さないと大蛇の祟りが起こるといわれています。その年の生贄に決まったのは素盞嗚尊と恋に落ちた稲田姫でした。素盞嗚尊は毒酒を入れた8つの甕を用意させ、無類の酒好きである大蛇を討ち取る策略。岩長姫の姿で現れた大蛇はその酒に次第に酔っていき…。
　近松門左衛門の原作をもとに復活された舞踊作品で、毒酒に酔い本性を現した大蛇を素盞嗚尊が退治するまでを描きます。

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