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三津五郎が語る「歌舞伎クラシック」第2弾

三津五郎が語る「歌舞伎クラシック」第2弾

 8月8日(金)まで、東京 東劇にて限定公開中の 「歌舞伎クラシック」第2弾、『勧進帳』『身替座禅』『船弁慶』について、坂東三津五郎が見どころなどを語りました。

自分が見てきた芝居
 「目をつぶればそのまま浮かんでくる舞台、僕が見てきた芝居、それが、この歌舞伎クラシックの時代」と、懐かしむ三津五郎。勉強のために見ていた先輩たちの姿は、今も目にくっきりと焼きついています。「演者だけでなく、場内の雰囲気も感じていただきたいですね」。というのも、「舞台でやれるのは70から80%、残りの20から30%はお客様がつくってくださる。それが歌舞伎だから」。観客と演者の戦い、磨き合いの歴史が歌舞伎をつくり上げてきたと言います。

 「人間は楽なほうに舵を取りたがるものですが、お客様を驚かせよう、感動させようとどんどん大変なほうへ舵を取ってきて、今の役があります。だから、初役をさせていただいても、役のほうが大きくて役が動いてくれないんですね。役者とお客様に磨き上げられて役のハードルが高くなっている。経験を経てようやく役が動いてくれるのですが、それを当り役まで高めたここに出ている方々は本当にすごい!」

三津五郎が語る「歌舞伎クラシック」第2弾

松緑、梅幸、勘三郎の素晴らしさ
 『勧進帳』の二世松緑。「憧れでした。奔放に見えて豪放な芸風でもあるけれど、実は緻密。書抜きには細かく書き込みがしてあり、写真もすべて整理整頓されていた」。だからこそ、六世尾上菊五郎の芸が継承されているのだと言います。

 「弁慶は大役中の大役。舞踊の要素、声、豪放さ、大きさ、お酒を飲むところのにじみ出るような愛嬌…。いろんな要素がそろわないと、歌舞伎座で弁慶はできません。芸は人なりと言いますが、義経にしても、梅幸おじさんの生来持っていらっしゃる品のよさ、ジェントルマンシップというのかな、もう誰にもできない。ここに至る男たちの人生をかけた生き方、決意を感じとっていただけると、芝居を観る醍醐味につながるんじゃないでしょうか」

 『身替座禅』の十七世勘三郎。「おじさんの目が、いたずらっぽいというかなんというか、もう、なんとも言えませんね。誰にも真似できない表情、お客様の気持ちを一瞬でつかむところとか。『勧進帳』の富樫とこの右京、中村屋のおじさんの両面、きりっとした面と愛嬌たっぷりのところ、それぞれがよく出ています」。

菊五郎劇団の思い出とともに
 『船弁慶』の五世富十郎。「この役は、六代目(菊五郎)以降は富十郎のにいさんが素晴らしい。静もできて知盛もできる人はなかなかいません。静は女方の踊りですが、能衣裳の壺折を着込んで自由に動けず、足さばきも目立ちますから、実は、『鏡獅子』や『道成寺』といった技法では踊れないのです」。

 九世三津五郎が舟長で出演。「能がかりの舞台からガラッと雰囲気を変えなければならない。難しい踊りではないけれど、それを魅せるのが腕。力まず、緊張した空気が和むようなものをお見せしないといけません」。そして、この舞台の富十郎と九世三津五郎、我當の3人の顔合わせは、三津五郎にとって小さい頃の菊五郎劇団の思い出が詰まった「昭和30年代の東横ホール時代を思い起こさせる」、一段と感慨深いものだそうです。

 「今回、見ることができるのはすごい方たちばかり。ここまで行かなかった人のほうが圧倒的に多い中、努力し、技術を身に着け、強い意志で芸を築いてこられた方たちです。一人の人間の生きてきた証しを感じとっていただけるといいですね」。この夏、映画館でじっくり、名優たちの人生に思いを寄せるひとときをお過ごしください。「歌舞伎クラシック」第2弾は8月8日(金)まで、東劇限定公開です。

三津五郎が語る「歌舞伎クラシック」第2弾

劇場のパンフレットで詳しいインタビューがご覧になれます

 
2014/07/16