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菊五郎が語る『新書太閤記』
2月2日(火)から始まる歌舞伎座「二月大歌舞伎」で、昼の部の通し狂言『新書太閤記』に出演の尾上菊五郎が、公演に向けての思いを語りました。
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「祖父さん(六世菊五郎)の写真集に(秀吉役の)写真が残っていて、ああ、やってるんだ、いつかやりたいなと思っていました」という、いわば念願の木下藤吉郎、秀吉役に挑戦する菊五郎。昭和14(1939)年12月歌舞伎座で上演された『太閤記』は、その年の正月から始まった吉川英治の新聞連載が原作で、連載が続く中、六世菊五郎が注力して歌舞伎につくり上げた作品です。舞台装置や衣裳の考証を前田青邨に依頼し、まるで絵巻物を見ているようといわれた舞台は評価も高く、大入りとなりました。
六世菊五郎から当代菊五郎へ
「今回はもっと歌舞伎風にしたい」。当代の菊五郎は、せりふ回し、舞台の転換や芝居の運び、衣裳など、すべてを通して面白い歌舞伎にと意気込みます。そこには、六世菊五郎にも通じる力の入れようが感じられました。「自分は秀吉とはまったく違う。あまりにもかけ離れていて、だからこそやりたくもなる。年とともにやりたくなってきて…」。しかし、面白くするといってもそう簡単ではありません。
「テレビドラマや舞台でも(秀吉を取り上げたものは)いろいろやっていますので、今回は、原作を読み返してどこが面白いか、どこが劇的かと考えて場面を選び出しました」。結果として、毛利攻めに出て秀吉がその場にいなかった「本能寺」以外は出ずっぱりに。「ほんと、膨大なせりふの量に泣かされています」と嘆きながらも、つくり上げるなかでの手応えを感じているようでした。
歌舞伎の演出を駆使してより面白く
選び出した場面を歌舞伎色にするため、たとえば、竹中半兵衛をめぐって信長と藤吉郎が対立してしまう場面では、「ただ、信長の心が変わるだけではつまらないから、(信長の正室の)濃姫が出てきて信長をいさめるようにしたり。『鞘当』などに出てくる“留め女”の感じですね」。一方で、大詰の「清州会議」では、「どうしても、敵役の柴田勝家がその場に残ってしまって…」、歌舞伎の幕切れの大団円とは行かないところもあります。誰もが知っている場面だからこそ、歌舞伎の味付けで面白くする作業が大変だと語りました。
秀吉を「魅力があって、人たらしで、機転が利く人」と言い、「エピソードが多く残っていて、だからこそやりがいもある」と、すっかり惚れ込んだ様子の菊五郎。「これだけ苦労していますから、またどこかでやりたいと思います」。幕が上がる前にこんな言葉が出るところからも、初日が待ち遠しくなります。
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歌舞伎座「二月大歌舞伎」は2月2日(火)から26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹にて販売中です。