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梅丸が「歌舞伎夜話」で語った二つの初挑戦
7月21日(木)、歌舞伎座ギャラリーで開かれた「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話」に、中村梅丸が登場しました。
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「3歳くらいで役者になりたい、と言っていました」。テレビの歌舞伎中継、母親の膝の上での歌舞伎座観劇から、縁がつながって梅玉のもとで見習いに。小学一年生だったので、「土日だけ楽屋へ来なさいと黒衣を用意してくださり、それを着てお手伝いという名の邪魔をしていました」。『御ひいき勧進帳』(平成17年1月国立劇場)で太刀持に出た翌年、梅丸を名のって部屋子披露。部屋子になってからは、「歌舞伎で生きていくと、すっかりその気になっていました。自分としては」。
学校と稽古事、そして舞台。回数券を持って「地下鉄に詳しくなった」ほど稽古に通い、短髪に詰襟の制服姿での楽屋入りは、「先輩たちから、“昭和だね、戦時中って感じだよね”と言われていました」と、想像するとおりの子役時代だったようです。3月の舞踊公演「SUGATA」(神奈川芸術劇場)で、孫悟空役のため金髪にしたときは、イメージの違いに誰もがびっくりしたということも。
現在は立役も女方も「どちらも勉強させていただきたいと思っていますし、どんなお役も拝見しているとやりたくなってしまいます」という貪欲さはもちろんとして、「師匠が得意とされるお役に一番憧れます」ときっぱり。そんな梅丸にとって、今年8月の歌昇、種之助の勉強会「双蝶会」出演は特別なものとなりそうです。『車引』の桜丸は師匠の梅玉も勤めた役。
「師匠がなさった役をさせていただくのが初めて。そのお役を直接教えていただくのも初めて。この機会をいただけたことをすごくありがたく思っています。師匠のレパートリーの一つにチャレンジさせていただけることが楽しみ」と、本当にうれしそうに話しました。稽古が待ちきれず、大阪松竹座出演中の梅玉のもとに行き、「最初のお稽古をしていただきました」と、はやる心が抑えきれない様子です。
別の初挑戦もありました。ドラマ「舞え!KAGURA姫」出演です(11月30日22:00よりBSプレミアムで放送予定)。ヒロインの憧れの先輩役で、「お前が先輩?と、師匠もびっくりされていました。撮影では伝統芸能の神楽が大変でした。不器用なので習得できず、ご宗家(藤間勘十郎)に見ていただいて皆さんの助けもあってなんとか頑張れました。完成を見るのが楽しみです」と、謙遜しながらも撮影現場は楽しかったと振り返りました。
昨年、伝統歌舞伎保存会の研修発表会で一日だけ勤めた『伊勢音頭恋寝刃』のお紺も、「まったく手も足も出なかった」と言いつつ、先輩俳優から教わることが楽しかったと梅丸は語りました。目の前の課題がどんなに大きくても、大好きな歌舞伎の世界にいること、そしてその師、梅玉の部屋子であることが支えとなって、果敢に挑戦できるのでしょう。梅丸の語り口からは師匠へのゆらぎのない尊敬の念が伝わってきました。
今は、「一門に対しての気持ちがすごく大事。一門の一員であることが、どなたが見てもわかっていただける役者になりたい。そして、師匠や魁春旦那が得意にされるもの、一門が大切にしているお役ができるようになりたい」。プライベートで興味のあることはと聞かれて山登り、「富士山に登ってみたい」と答えた梅丸、歌舞伎でもやはり高みを目指して歩みを進める日々が続きそうです。